<加茂流プレス>
加茂周の日本代表におけるプレスは、94年モデルのブラジル代表を手本としていました。中盤の4人が攻撃担当の2人とボランチの2人に分けられていたわけです。したがって、配置は下のようになります。
ジーニョ マジーニョ
ドゥンガ
M・シルバ
第2ボランチのドゥンガが心持ち前に位置しますが、オフェンシブな2人とディフェンシブな2人の2ラインになっていました。加茂周は、これをそのまま、下のようにしたのです。
名波 森島
山口
本田
この場合、プレスに参加する名波、森島は、ディフェンスの比重が多くなり、守備へ攻撃へ、走る距離が多くなってしまいます。仕事が多すぎて、大変な重労働を課せられたわけです。本田と山口がもう少し前に位置していれば、名波、森島の守備へ戻る走行距離も短くなり、もっと楽だったはずです。
これでは、4・4・2の3ラインではなく4・2・2・2の4ラインとなり、コンパクトなサッカーができなかったのです。
ブラジル代表では、ブラジル人のボールキープ力、サイドバックの有能さで、オフェンシブな2人の負担を軽減できたわけです。もちろん、オフェンシブな彼らも献身的に守備をこなしました。
<リッピのプレス>
で、ユベントスでリッピは下のような、配置でコンパクトな3ラインを構成したのです。
ユーゴビッチ ジダン ディ・リービオ
デシャン
デシャンは少々下がり気味になりますが、フラットに近い配置にしました。これで、守備に戻る距離が短くなり、攻撃にも守備にも参加できます。ヨーロッパではこの配置が主流で、便宜上、ボランチという言い方をしますが、中央のMFが下がり気味になってしまうことは、実際のゲームではあり得ません。
まさにFW、MF、DFの3ラインがコンパクトに構成されます。しかし、これには、フィジカル面とキックやトラップといった基本テクニックを身につけていなければ、とても実現できません。ですから、ユベントスではフィジカル面ではかなりの負荷ををかけた練習を行っているそうです。通称「労働者サッカー」とでも言えばよいのでしょうか?実際、このシーズンのユベントスの強さはこの4人のMFによる所が多かったようです。
<加茂周の苦悩>
そこで、加茂周の苦悩です。本来ならば、彼もユーベのようにしたかったのかもしれません、しかし、当時の(今でもかな?)日本人ではそこまでの力がなかったといえます。本田があまりにも守備的過ぎたということが原因です。
また、こうもいえます。W杯予選では、引き分けはできても、負けることはできないという厳しい状況が、彼の意識を守備的にさせ、本田の起用となったものと思われます。井原も「ラインをあげすぎるな!!」とゲーム中に怒鳴られたそうです。ラインを上げることで成り立つプレッシングなのに、そんなことを注意されれば、選手たちの混乱も無理もない所でしょう。監督が混乱しては選手はもっと混乱してしまいます。