[第7節]in日本平:清水エスパルス戦

文・写真/大熊洋一

スタジアムに入ってまず最初に感じたのは、芝の酷さだった。緑が残っているところと、完全にはげてしまっているところが混在している。芝というよりも、砂場の上にところどころ芝が植えてあるといってもいい。

まるで砂場と芝が混在しているかのようなピッチ

おかしかったのはグラウンドだけではない。まずはアウェーチームのメンバー紹介とアナウンスが流れた後、スクリーンに登場したのはジュビロのGKとDFの名前。ちょっとの間があって、「しばらくお待ちください」。ようやくコンサドーレの選手の名前が出てきたと思ったら、今度は「坂井直樹」なんてのがいたりする。プロの興行としてはずいぶんお粗末だ。

エスパルスのメンバー紹介時には、清水側のゴール裏に「王国はどこへ行った?」「誰のせい??」の横断幕が掲げられた。ゼムノヴィッチ監督の名前がアナウンスされると、一斉にブーイング。どうも、状況は、コンサドーレが函館で試合をしたとき-「責任を取るのは誰?」の横断幕が登場したとき-に似ているらしい。そうはいってもエスパルスはセカンドステージ15位。コンサドーレはそれよりさらに下の(もうこれより下がない)16位、年間順位も16位で、年間14位の神戸との勝ち点差は13。残り試合がこの試合を含め9試合であることを考えるとかなり厳しいが、とにかく、目の前の試合をひとつひとつ勝っていくよりほかない。

メンバー
☆清水エスパルス:GK16羽田、DF25市川、12ペツェル、2斉藤、30高木純、MF13平松、6大榎、5吉田、8アレックス、FW26安貞桓(SUB:1真田、21高木和、27村松、10澤登、17横山)
☆コンサドーレ札幌:GK1佐藤洋、DF32佐藤尽、8ビジュ、6大森、MF7酒井、15森下、20和波、17小倉、FW16堀井、18曽田、13平間(SUB:29井上、2田渕、5ジャディウソン、9森山、11磯山)

ホームのエスパルスにとっては、安貞桓の初先発にして日本平デビュー戦。もっとも、戸田が出場停止、森岡と伊東がケガ、池田がアジア大会出場と、レギュラークラスを4人欠いている。対するコンサドーレは、前節でジュビロのディフェンス網を切り裂いた平間が、堀井と曽田の2トップの後ろに構え、小倉が中盤でゲームを作る。

15時04分、キックオフ。1分、中盤で小倉からグラウンダーのパスが平間へ。平間のファーストタッチだったが、小倉からのボールは荒れた芝にスピードを殺され、おまけに平間には3人が寄ってきて、平間は何もできないままにボールを奪われてしまった。早くも前途多難を思わせる。

5分、両チーム通じて最初のシュートはアレックス。エスパルスから見て右サイドの安貞桓から中央のアレックスへ低くて速いボールが入り、ゴールを背にしてこれを受けたアレックスが体の向きを変えながらうまくボールをコントロールして中央寄りのスペースへはたいてコンサDFをかわすと、エリアの外から思い切って放ったが、右にはずれた。

8分、エスパルスに先制点を奪われてしまう。コンサドーレが荒れた芝に苦労してパスをつなげずにいる中、安貞桓が右サイド(メインスタンド側=もっとも芝が荒れているところ!)を力強いドリブルでぐいぐいと前進。安貞桓がゴール前へ入れたボールはコンサドーレがクリアするも、エスパルスが今度は左に展開し、高木がクロスを上げたところへ大森が足を出してCKに逃れる。平松の左CKはショートコーナー、いったんすぐ前の選手に預けて、ふたたび平松が少し角度のあるところで受けてファーサイドへ大きなボールを送ると、バロンがヘッドで折り返す。このボールはゴール前を通過してフィールド上に落下したが、ビジュが緩慢な動作でこれを見送ってしまった。ビジュは、そのままゴールラインを割ると思ったのかもしれないが、DFとしては詰めの甘いプレーといわざるを得ない。転々としたボールを逆サイドで拾ったアレックスが丁寧にゴール前中央へ折り返すと、詰めていたペツェルが楽々とゴールを決めた。

3分後、エスパルスの2点目。これも起点は右サイド(コンサドーレの左サイド)だった。スローインを受けたエスパルスの選手が前方のスペースへ浮き球を送り、走りこんだ安貞桓がヘディングでやはり浮き球を市川に送り、市川からゴール前へきれいなアーリークロスが入る。ボールはややファーサイドに流れ、佐藤洋平がバロンと競りながらジャンプして手を伸ばしたがボールに触れることはできず、バロンが落としたところをアレックスが無人のゴールへと流し込んだ。ハイボールに強い佐藤洋平にしては痛恨のミスだったが、その前の市川のクロスを楽に上げさせたディフェンスにも問題があるし、さらにはその前の局面で荒れたピッチを避けるべく浮き球をつないだ安貞桓らも見事で、コンサとしてはなすすべなく奪われた失点といった印象だった。

その直後、ベンチの張監督からの指示で、曽田が左DFに下がった。大森が左サイドに上がり、和波が森下とダブルボランチを組む形に変わった。ちょっと遅すぎるバロン対策だが、まだ時間は十分にあるのだから、これ以上の失点を防ぐことも必要だろう。コンササポが陣取るゴール裏スタンド前では、磯山がアップを開始。曽田が担うべき役割を磯山に託すということか。

15分、左サイドで曽田が浮き球を送り、これを受けた小倉が、DFに体を寄せられる前に振り向きざまのシュート。18分、ハーフウェイ付近から大森がロングスロー、エスパルスDFと堀井がジャンプして競るもボールは両者の頭の上を通過、さらにペツェルの前で落ちたボールは予想外の大きなバウンドとなって(これも荒れたピッチの影響だ)ペツェルの頭も越え、小倉がフリーで拾った。小倉は角度のないところからシュートを放つが、ボールは逆サイドの枠の外へ。逆サイドには酒井が走ってきてはいたのだが、まったく追いつかなかった。

20分、酒井は右サイドを突破し、クロスを入れる。そのままGKにキャッチされてしまったが、この試合初めてのコンサドーレのサイドアタックだった。ところが、その直後、タッチライン際でルーズボールを吉田と競った酒井が倒れてしまう。接触があったようには見えなかったのだが、すぐに曽田がベンチに向かって「×」を出す。

23分、コンサドーレが攻め込んだところで、森下がどうしようかと迷っているうちにアレックスにボールを奪われ、エスパルスのカウンター。左サイドをドリブルで上がったアレックスがDFの裏を通して中央の安貞桓へパス、安貞桓はフェイントを入れて曽田をかわしエリア内へと侵入したが、曽田がふたたび安貞桓の前へ回りこんで安貞桓の足元にあるボールへスライディングタックルを仕掛け、難を逃れた。安貞桓はまだまだコンディションがよくないのか、この後もいいポジションをとりながら次のプレーへの判断が遅れて何度もミスを犯すことになる。が、ここでは、曽田の対応もほめておきましょう(^^)。

25分、コンサドーレは一気に2人を代える。酒井→田渕、平間→磯山。平間は、結局、何もできなかった。酒井は、担架に載せられてメインスタンド下へ消えていった。酒井の顔はタオルで覆われ見えなかったが、右膝がへんな具合に曲がっているのが気になった(のだが、まさか、山瀬と同じような怪我だったとは…)。

この辺から試合がだれてくる。2点のリードを奪ったエスパルスは、攻撃に絡むのはバロン、アレックス、安貞桓、平松の4人だけで、他の選手は自陣に引いたまま。バロンへハイボールを入れても曽田が競ることで序盤のような決定的場面は生まれず、アレックスや安貞桓が遠目からシュートをねらう程度である。一方のコンサドーレは、磯山をターゲットにロングボールを入れるつもりだったのだろうが、エスパルスが引いていることに加え、中盤での寄せが早く、ボールを持っても次のプレーにつなげない。無理にスペースへ通そうとしては相手に奪われる、その繰り返し。

久々のコンサドーレのシュートは40分、和波が小倉とのワンツーからエリア外でミドルをねらったが、ヒットせずに枠の外へ。どうにも得点が入りそうな気配がない。

後半になっても状況は変わらない。コンサドーレはセカンドボールが拾えず、攻撃の形が作れない。磯山、堀井の2トップ(というのもなんか迫力不足だなぁ…)とその後ろがあきすぎて、おまけに2トップでキープもできないから、前線へロングボールを入れてもどうにもならない。マイボールになったときに全体を押し上げていけばよいのだろうが、いつもの悪い癖で、中盤から後ろはずるずると下がるばかり。56分、GK佐藤からのキックを受けた堀井が左に流れながらキープ、上がってきた大森へ預けて大森がCKを得たのが、後半最初のチャンス。60分、中央の和波から左前方のスペースへ出たボールに大森が追いつきゴール前へ折り返すもGKがキャッチ。63分、佐藤尽からの長いボールをゴールを背にした形で堀井が受け、DF2人に囲まれながらもボールをリフティングしながらコントロールし、体の向きを変えてつま先でゴール前中央のスペースへパスを出したが、磯山は反応せず。

70分、ロングボールを受けた磯山が前へ出ようとしたところを斉藤に引っ張られ、斉藤にイエローカード。やや左より25メートルのFK、小倉が4人の壁の外側を巻いてねらったがGK羽田が弾き出し、跳ね返りを磯山がシュートするもこれは宇宙開発。

71分、大森がアウト、森山イン。磯山の後方に堀井と森山が並び、森下のワンボランチにして和波がふたたび左サイドに出たが、いくら森山が入ろうとも、前線へ有効なボールが入らないのだからどうしようもない。エスパルスがゴール前でボールを動かず場面が多くなり、コンサドーレはただ蹴り返すだけになってきた。74分、アレックスが田渕を簡単にかわしてクロスを入れ、バロンが曽田の後ろでものすごく高い位置でのヘディングシュートを放ったが、佐藤洋平がセーブする。

80分、久しぶりのコンサドーレのチャンス。小倉から右に展開、田渕がゴール前へ放りこんだボールをエスパルスDFがクリア、これを拾った小倉が左から右へ対角線上にシュート気味の低いボールを送り、中央で森山が少しだけ触ってからその外に詰めていた堀井がシュートを放つもGK羽田にブロックされた。こうしてゴール前に放りこんでいけばチャンスになるのだが、なにしろ、中盤をエスパルスに完全に支配されてしまっているから、そこまで行き着かないのだ。

85分、左からアレックスのクロス、バロンと競った曽田がCKに逃げる。最初のCKはコンサドーレがクリアしたが、2度目のCKからペツェルに決定的となる3点目を入れられてしまった。中央でジャンプしたバロンの上をボールが通過したとき、その後ろにいた佐藤尽は、バロンに気を取られて自分の背後にいたペツェルが前へ出てくることへの対応が遅れてしまった。もっとも、この場面、コンサにしては珍しく、前線に3人を残したままで、ふだんに比べればゴール前が手薄になっていたことも事実。その意味では、やむを得ない失点だった。

最後のチャンスは89分、左サイドで小倉がフェイントでDFをかわしてからゴール前中央へふわっとしたボールを入れ、逆サイドでフリーになっていた森山がジャンプしてヘディングシュート。しかし、シュートはまったく力がなく、GK羽田の正面へ。森山のポジショニングはさすがだと思うものの、やはり力の衰えは隠せない。

かくして、序盤の2失点の後はこれといった見どころもないまま、コンサドーレは敗れてしまった。結局、荒れた芝を嫌ってバロンの頭を徹底的に使った(使われた)序盤がすべてだった。完敗だった。バロン対策で曽田をDFにまわしたり、ピッチコンディション不良で平間が仕事ができないと思えば磯山を入れたりと、早めに手を打ったという点では「なすすべなく」ではないのだが、2点のビハインドではすべてが後の祭り。おまけに、試合の内容からも何も伝わってこない寂しさ。前節のジュビロ戦での健闘は何だったのか?あれで今年のコンサドーレは燃え尽きてしまったのだろうか…???

僕は、スタジアムを出たところで、同行者に「もういいよ、今シーズンはこのまま終わりにしてくれよ、あと8試合も見るなんてつらすぎるよ!」と、思わず言ってしまった。


ホーム側ゴール裏ではこんな横断幕が エスパルス側ゴール裏にはフラッグが3枚
コンサ側ゴール裏には12番のフラッグ 課題のセットプレーでまたしても失点(3点目の場面)
試合後、コンササポに挨拶する選手たち
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