文・写真/大熊洋一
9月15日、年間15位だった神戸に敗れ、14位との勝ち点差が6から8に開いた。1日おいて17日の朝にイバンチェビッチ監督の解任と張コーチの新監督就任が発表された。そしてその翌日、横浜での試合。あまりにも突然の出来事だったからとりあえずメンバーに大きな変化はないのだろうと思いこんでいたら、とんでもなかった。
☆メンバー
横浜F・マリノス:
GK1榎本、DF38中澤、4波戸、7ナザ、MF30久永、6上野、37奥、2ドゥトラ、11清水、FW29坂田、9ウィル(SUB:31下川、32三上、13永山、14外池、18平瀬)
コンサドーレ札幌:
GK1佐藤洋、DF32佐藤尽、8ビジュ、6大森、MF7酒井、4今野、15森下、20和波、FW16堀井、5ジャディウソン、18曽田(SUB:21藤ヶ谷、2田渕、33松川、9森山、11磯山)
3バックの中央にビジュがいるのは、岡田元監督が初年度(1999年)の天皇杯で一度試したことがあったと思うのだが(1回戦の阪南大戦の途中だったように思う-いまいち記憶が判然としないのですが…)、いずれにせよ、驚きではある。その代わりに今野が中盤に上がり、右サイドはサブが続いていた酒井が先発、このところレギュラー扱いだった西田はベンチにも入っていない。小倉とバーヤックもベンチ入りからはずれ、前節でJ初得点をあげた曽田が、ファーストステージ13節の市原戦(=小倉とバーヤックが出場停止だった試合)以来の先発である。対する横浜は、ファーストステージでは磐田と優勝を争っていたのに、セカンドステージは開幕から3連敗で、セカンドステージだけで見れば札幌よりも順位は下だ。おまけに松田は風邪を引いたとかで欠場。けっして磐石ではない。
横浜は中3日、札幌は中2日と、日程面での差はあるが、さすがに9月後半の夜ともなれば、札幌との気候の差は夏場ほどにはない。スタンドでじっとしていると半袖ではちょっと寒いかなと感じるぐらいで、汗も出てこなかった。
試合序盤は札幌のペースだった。横浜は、なるほどこれは勝てないわけだと思ってしまうぐらいに選手の動きにキレがなく、パスがつながらない。8分、森下が両チームを通じて初めてのシュートを放つ。さらにそれから1分もしないうちに、右サイドのハーフウェイ付近で今野が相手ボールを奪った。今野はすぐに酒井につなぐと中央へ走って相手選手をひきつけ、それによってできたスペースへ酒井がドリブルで突進。酒井は相手に詰められる前に思いきりのいいミドルシュートを放ち、これを榎本が弾く。そこへ堀井が飛び込む。シュートはクロスバーのはるか上空へと飛んでいってしまったが、ゴール前への詰めは、いかにも堀井らしいプレーだった。
この後もしばらく札幌が相手陣内へ攻めこむ時間が続いた。時間をかけずに前線へ運び、両サイドが上がっていく-その意図は明確ではあったのだが、しかし、3トップ(ジャディウソンがかなり動き回るので3トップというよりは2トップに近かったかもしれない)の中央に位置する曽田がまったく機能しない。12分には、曽田が不用意なバックパス(しかもえらくスピードの遅いパス)を出してしまい、これを奪われてウィルにシュートまで持っていかれてしまう。
調子が悪いとはいってもそこは横浜、15分ごろからは、横浜がボールをキープする時間が長くなり、20分を過ぎると札幌は押しこまれっぱなしになってきた。22分、波戸が右サイドを上がりシュートを放つがサイドネット。33分、波戸から今度はゴール前に速いアーリークロスが入ったが、ビジュに体を寄せられたウィルのヘディングシュートはクロスバーのわずかに上。
ビジュはよく守っていた。横浜が長い時間ボールを持っていた割に決定的なチャンスを作れなかったのは、ビジュがかなり広い範囲をカバーし、有効なボールをゴール前に入れさせなかったからだ。その結果、パスをもらえないウィルは、ボールをもらいにどんどん下がっていく(これは昨年の札幌でもよく見られた光景だ)。札幌は、あまりにも相手にボールを持たれているために体力を消耗するのが心配ではあるが、失点しそうな気配はほとんどなかった。
後半に入って3分、ビジュが自陣の深い位置でドリブルを仕掛けてボールを奪われたが、坂田がシュートをふかして救われた。なんだかんだいってもこの辺は素人ディフェンダーだ。
後半14分、札幌が久々にチャンスをつかむ。ジャディウソンが相手ボールを奪うとそのまま左サイドをドリブルで上がり、ファウルを受ける(ここで札幌選手交代=和波→松川)。フリーキックをジャディウソンがゴール前に入れるも横浜クリア、しかしこぼれたボールに酒井が足を出し、うまくコントロールして地面から浮いたところを確実に叩いて強烈なシュートを放った。さらに16分には、左からのジャディウソンのコーナーキックに今野がヘディングで合わせたが、惜しくも榎本の正面。20分には、ゴールほぼ正面のフリーキックをジャディウソンが直接ねらう。シュートは枠をとらえたが、榎本が横っ飛びでどうにかはじき出す。
24分は横浜のチャンス。左サイド(札幌の右サイド)でウィルが今野と競りながらボールを得て、オーバーラップしてきたドゥトラへ。ドゥトラの低いクロスにビジュが足を投げ出しクリア(一瞬、オウンゴールかとドキッとしたが)。これで得たコーナーキックからナザのヘディングシュートはクロスバーのわずかに上。
このピンチを逃れると、札幌が中盤を支配しはじめた。今野や、交代で入った松川が、右前方のスペースへと長いボールを出し、これに応えて酒井が右サイドを駆け上がることで何度かいい形を作りかけた。横浜は、攻め疲れたわけでもなかろうが、中盤のチェックが甘く、中澤、波戸、ナザの最終ラインでかろうじて持ちこたえているように見えた。
38分、佐藤洋平のビッグプレー。ゴール前で坂田のスルーパスにウィルが抜け出してシュート、これを洋平がはじくと、こぼれ球を今度は上野がシュート、しかし洋平が体勢を崩しながらも体に当ててコーナーキックに逃れた。41分札幌選手交代、酒井に代わって久々出場の田渕。酒井を引っ込めるのはもったいない感じもしたが、何度も長い距離を走っていたから、もうこの辺が限界だったのかもしれない。
僕は、90分で決着をつけるためにも、何もしない曽田に代えて森山を入れてほしかったのだが、結局、3人目の交代は残したまま、スコアレスで前後半90分が終了してしまった。今季6度目の延長戦である。
延長前半2分、札幌3人目の選手交代で佐藤尽→森山。曽田が右のストッパーに下がった(これで最終ラインは大森-ビジュ-曽田と、なんとも危うい3人になってしまった^^;)。
5分、横浜のドゥトラが中央をドリブルで上がりシュート、わずかに左にはずれる。7分、今度は札幌の田渕が右サイドからゴール前へ浮き球を送り、松川が飛び込むが半歩及ばず。松川がさわってさえいればVゴールになっていただろう。この試合を通じて、もっとも得点に近づいた瞬間だった。
9分に横浜は坂田を下げて平瀬を入れ、その平瀬のポストプレーからコーナーキックを得たが、ここも佐藤洋平のファインセーブが横浜のゴールを阻んだ。この辺からはもう横浜だけが攻めているような状態で、札幌は防戦一方。札幌はそれでも延長前半を無失点で乗り切り、延長後半からは延長での4人目の交代枠を使って堀井に代えて磯山を入れてきた。延長後半3分、上野が抜け出して佐藤洋平と1対1。上野は、飛び出してくる洋平をかわそうと、軽く浮かせたシュートを放った。万事休す、だったが、洋平がよく我慢して動かず、上野のシュートは洋平の体に当たった。よし、これで行ける!あと10分だ!守りきって勝ち点1だ!
…でも、守りきれなかった。これが今のコンサドーレなのだろう。延長後半7分、ナザの左からのフリーキックを、ウィルがゴールに背を向けた状態で胸で落とすと、それを拾った平瀬が右足を振りぬき、Vゴールが決まった。またセットプレーからの失点ではあるが、ここは札幌の守り方がどうこうよりも、ポストプレーをしっかりこなしたウィルと、シュートを枠へきっちり飛ばした平瀬の技術の高さをほめるしかないだろう。札幌は、やるだけのことはやったと思う。そのうえでの敗戦なら、それはもうどうしようもない。
それにしても…いよいよ厳しくなってきたなぁ…
試合開始直前。平日の夜とはいえ、このスタンドはあまりにも寂しい。 | 1階ゴール裏から声援を送るコンササポ |
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延長戦に向けスタッフを含む全員で円陣を組むコンサ | ゴール裏に挨拶する選手たちと、コンサドーレコールを送るサポーター |