文・写真/二上英樹
コンサにとって三年ぶりの舞台となったJ1リーグも1stステージは最終節の15節。開幕ダッシュに成功したコンサドーレは、終盤調子を落とすもここまで6勝6敗2引分けの6位という位置に着けている。この日の試合には、チーム創設以来のトップリーグでの初の勝ち越しがかかっていた。
そしてこの最終節の試合は、新装なった札幌ドームでの記念すべきコンサ初のホームゲーム。私的には、札幌を離れて以来札幌の試合を見れるのが夏の時期しかないので、お伊勢参りではないけれど年に一度の札幌詣でのコンサ観戦とあっては、“せっかくだからできたてのドームが見たい”というわけで、この試合を見に行くことにしたのだった。
昨年の厚別での浦和戦、今年の厚別での鹿島戦のチケットのはけ具合を見るまでもなく、ドームで初のホームゲームとあっては前売りで完売になるだろうとは予想してはいたけれど、さすがに2時間半で売り切れるとは予想を越えている。前売りの売出しに合わせて札幌の知り合いにSSを頼んでおいたものの、“Aしかとれなかった”との返事。日頃平均が3千人の新潟がこちらもW杯会場となるビッグスワンで初ゲームをしたときは2万3千人を動員したわけだから、日頃1万人以上が平均のコンサとしては定員を遙かに超える7万人ぐらいがドームに殺到してもおかしくないわけで、まあ仕方あるまい。こうしてドーム初戦のチケットは、コンサ史上最高のプラチナチケットになった。
試合の日はいつも開門後にスタジアムに入るのだけれども、初めてのドームだからあちこち見ておきたいぞということで、開門前の3時頃にはドームに到着の予定で向かった(キックオフが7時、その3時間前の4時が開門時間)。地下鉄を使って福住駅で下車をしたら既にコンササポであふれていた。まだ開門前なのに?と思ったけれど、人のことはいえない。地上に出るとスーパーのエスパの入り口では、コンサグッズや必勝弁当が売っていた。ドームに近づくにつれ、なぜかうれしくて自然とにやけてくるのは不思議なもんだがいいもんだ。
福住にはすぐそばに月寒の練習場があるため何回か来たことがあるのと、ドーム自体は昨年の同じ時期に既に外装は完成していて、それを見ているので外見がでかいことはわかっていたけれど、歩道橋を渡って袂まで来て改めて見上げてみると、やはりデカイ。そのスタジアムの周囲にはホーム側もアウェイ側も長い行列が既に出来ていた。三時間前の開門時には7千人は行列に並んでいたらしい。ゴール裏で席取をするわけでもないので、この長い行列を横目にぐる~っとドームの周囲を歩いてみた。ドームの裏手、ホバリングステージ上の芝を養生するためのオープンアリーナの場所もでかい。この日は、関係者用の駐車場になっていたけれども。そのさらに裏手の方には人工芝と、天然芝のグラウンドが広がっていた。そこまで足を運んでドームの方へ戻ってみると、ちょうど開門時間になったようで、長い行列がゆっくりうごきはじめていた。
その最後尾に並び、ゆるゆると進む行列についてスタジアムの中に入ったのだが、ちょうど入り口付近になると、なんかみんなバーゲンに殺到するお客さんの様な感じで、かなり殺気だった状態になっていた。中に入ってスタンドに上がってしまうと、この時間それほど殺気だって入場する必要がないのがわかるのだけれども、なんせ入り口の所から中のスタンドが見えないから、あの長い行列を見てしまうと気ばかりせるみたいな所があったのかも。
入り口から中にはいると、まずスタンド下のホールのような所にでる。ドームのピッチ部分は正円で、スタンドも一層の正円状のすり鉢型だから、そのスタンド裏手のスペースもそれを囲うようにぐるーっと同じような感じでつづく。まだ慣れてないせいか、少し歩くと東西南北の方向感覚がおかしくなってしまう。とにかくピッチが見たくて、すぐにスタンドにあがった。ドームも厚別と同じようにB自由席には、自由に入れる。この慣習は非常に良い慣習だと思っているので、是非永久に続けて貰いたいものだ。さて知り合いのサポに挨拶するためにまずはB自由席に上がってみたが、話しに聞いていたとおり非常に見やすい。その後A自由の方へ移ったが、B自由が一番ドームの恩恵を受けているのではないだろうか。
最初のホームゲームとあって、この日は試合前にいろんなイベントが目白押し。まずユースと北海道高校選抜の前座試合。コンサドールズは新コスチューム(シーズン当初からっだたのかは知らないけれど三代目のユニを初めてみた)で登場。選手入場時のBGMはFIFA ANTHEMだったし(だったと思う)、北海道出身の大橋純子さんが君が代を歌い、桂札幌市長のキックインも行われた。また、スポンサーからプレゼントされたユニフォーム型ビッグフラッグも初お披露目。バックスタンドのビッグフラッグに加え、ホーム側ゴール裏に二枚の巨大ユニが翻った。その上このような日がホームゲーム観客通算百万人を達成した日となってしまう所などは星の巡り合わせとしかいいようがない。
そうこうしているうちにキックオフの時間になった。スタンドは満員、アウェイの一角以外見事に赤黒に染まっている。バックスタンドの後方には何となく立ち見になっている人達がすでに見える。コンサ初の4万人のスタンドにサポのテンションは最高潮。ゴール裏の応援のリズムに拍手とメガホンと歓声が重なって、それはそれはすごい状態。さて今日の先発メンバーは以下の通り。
■札幌
- GK:佐藤
- DF:田渕、名塚、森、大森
- MF:野々村、ビジュ、山瀬、和波
- FW:ウイル、播戸
- サブ:藤ヶ谷、森川、今野、アウミール、曽田
■横浜
- GK:川口
- DF:波戸、松田、小村
- MF:石川、上野、遠藤、永山、中村
- FW:外池、平間
- サブ:榎本、數馬、田中、木島、田原
札幌は、この時点でベストの布陣。前節アウミールから先発を奪った和波がこの日も左サイドに入る。当然押し込まれる展開を想定してスペースに出す作戦のようだ。守備陣はいつもの通り。
対する横浜は、純国産の布陣。日本代表を多く抱える横浜に対し、0の札幌。アルディレス監督の解任などごたごたがあるとはいえ、どう考えても個々の選手の能力値の合計は横浜の方が高い。何よりも大きいのは、横浜のキーになる中村俊輔が前節から復帰したこと。これが一番コンサにとってはやっかいだ。でも単に能力値の合計だけで、勝敗が決まらないところがサッカーのおもしろい所でもある。
いずれにしても札幌のカウンターが決まって作戦通りに勝ちを拾えるか、横浜が俊輔を起点に中盤を支配して押し込むか、といったところが今日の見所。そして大歓声の中キックオフの笛が鳴った
とはいえ、自分としては今季初めて生の試合を見るわけで、今日の選手の動きがいつもに比べて良いのか悪いのかが、普段の試合を見ていないからよくわからない。立ち上がりの選手達は地に足がついていないように感じたが、それはすごい大歓声の中で試合が始まって、スタンドにいる自分も気持ち的に舞い上がっていたせいでそう感じたのかもしれない。立ち上がりの様子見の時間帯が過ぎると、徐々に横浜が中盤を支配しはじめる。中村にボールがまわるたびに、またセットプレイになる度に、ピッチとスタジアムに言いしれない緊張感が走る。今季はじめはスランプや怪我で落ち込んだものの、この日の中村は危ない雰囲気が漂いはじめていた(絶好調の時期ほどではなかったものの)。
それでも、先制点を決めたのは、圧倒的な応援を背に頑張る札幌。前半35分、右サイドをしぶとく抜け出た山瀬からのパスをゴール正面で受けた播戸がきっちり横浜ゴールにたたき込んだ。この瞬間、スタンドの4万人が総立ち、はじけて大騒ぎ。その様は“すごい”としか形容しようがない。でも、この1点でお祭り気分だったピッチとスタンドの雰囲気が、勝敗にこだわる厳しい雰囲気に変わった。いよいよ本当のサッカーが始まる。それでも、前半はこの先制点を奪った勢いでそのまま終了。
後半開始早々は前半と同じ様な感じで進むが10分過ぎから様相が変わる。完全に横浜のペースになり、札幌はピンチの連続。後半はゴール前で決定的なピンチが5回ほど続くのだが、そのうちの二回目のピンチに同点ゴールを許してしまう。後半13分の横浜のCKだったのだが、蹴るのは俊輔。ゴール前ファーサイドにあがったボールを佐藤が完全にパンチングしきれず、こぼれたボールを中に折り返され、小村に押し込まれる。
セットプレーから1失点を喫するも、この日の佐藤はそれはそれは鬼神のような活躍だった。DFラインの裏に出されたパスは数知れず。横浜FWと佐藤が1対1になることもしばしば。それをことごとく防ぐ。ポストやバーをボールがたたくたびに、4万人の悲鳴がシンクロするスタンドもすごかったが、これが俺の仕事、当然とばかりにたんたんとゴールを死守する姿はそれ以上にすごかった。
70分に疲れの見える和波に替えてアウミールを投入するが、横浜優勢の流れは変わらず。それでも札幌はなんとか90分を持ちこたえた。後半は札幌のチャンスも何回かあったのだが、ひたすら守ってなんとか90分を終えたといった印象しかない。それほど決定的なピンチが多かった。にもかかわらず、延長に入る前に“今日はダメだ”といった悲壮感は全然なく、“今日は絶対勝てる”といった根拠のない自信の様なものがうかぶ自分がおかしかった。“もうあかん”といった決定的なピンチが何度も続いたのだが、それ以上にすごい札幌の守りっぷりが、そんな気を起こさせてくれたのかもしれない。
延長に入っても、横浜がゲームを支配し後半と同じような展開が続く。この風向きが変わったのが、延長後半5分。残り10分のところで、播戸に変えて曽田、山瀬に替えて今野と、一挙に二人を投入してから。横浜に完全にゲームを支配されてから50分近い、こうなるとピッチ上の選手達の対応では事態の打開は計れず(対応しようにも時間が経てば立つほど疲れもたまるし)、選手交代によってしか対応できない。この時の選択肢は二つ。守備を固めて引き分けを狙うか、あくまで点を取りに行くか。DF森川でなくFW曽田を投入したことで、岡田監督はあくまで攻めて来た。残り10分でも守りに入らず(引き分けねらいではなく)勝ちに来たことで、横浜優勢の試合の流れが五分になる。ここから試合終了までの10分は、両チームまさにノーガードの撃ち合い。悲鳴と歓声が交互に行き交う展開は、それはそれはすごかった。
終了間際に野々村を森川に代えるが、試合の流れは五分のまま、勝負はロスタイムに。長いロスタイムがとられるかと思ったが、主審のディックヨルさんロスタイムとらずにあっさり終了。その笛もよくわからない終わり方で、選手もサポも肩すかしを食らったような終了だったが、コンサ初のドームでの試合は、こうして引き分けに終わった。
この日の試合を見て感じたことは、コンサドーレは良いチームになったなあ、ということ。確かに勝てなかったけれど、コンサドーレのサッカーを充分というほど堪能させて貰った。スタープレーヤーがいるわけでもなく、華麗な個人技を見せてくれるほど決してうまいわけではないのだけれど、みんながやるべき事を理解してて、それをコンセンサスをもってチームとして実行しているのが、見ていてわかる。決して強いチームとかうまいチームとかとは感じなかったけれど、最後まで諦めないぞといったしぶとさを感じさせてくれる。これが一番大事なことのように思える。こういう戦いを続けられれば、チームとしてゆっくりかもしれないけれどのびていくような気がした。それでも個人技で打開したりは出来ないチームなので、2ndステージはチーム状態が悪くなったときでもお互いを信用して同じように戦えるかが課題かも。
すばらしいゴールシーンを一杯見せてくれるゲームも確かに良いけれど、あれほどの守りっぷりを見せてくれるゲームもそうあるものではない。山瀬のしぶとい突破からの播戸の記念すべきドーム初ゴールも見られたし、あと足りないもはといわれれば、“勝利かな”といった感じのしたドーム初観戦でした。
完成した札幌ドーム。福住駅側の歩道橋の上より。 | ドーム裏手のオープンアリーナの部分。当然芝のグラウンドはありません。この日は関係者用駐車場になっていました。 |
ちょっと遠目でわかりにくかもしれませんが長く続く行列。この行列はホーム側B、A自由席にはいる人達の行列。 | コンサユースU-18と北海道高校選抜の前座試合。 |
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赤黒でびっしり埋まったスタンド。これはピッチ練習の時なので、まだ試合開始30分前です。 | ピッチへの階段を上って選手入場。 |
この日デビューしたユニ型ビッグフラッグ。 | ゴール正面フリーキックでの俊輔(キッカー)対洋平(キーパー)緊張の一瞬。この日はこんな瞬間が数え切れないほどありました。 |
両チーム譲らず1対1のまま試合は延長戦へ。 | 結局勝負つかず引き分け。試合後ゴール裏に挨拶するコンサイレブン。 |