『二上英樹の観戦記』
2ndステージ最初の厚別の試合。開幕戦は、セレッソ大阪を3-1で倒し、勝ち点3を上げたコンサドーレは、連勝をねらって、広島をホームに迎えた。ペレイラ、マラドーナ、バルデスを怪我で欠く札幌は、前節C大阪戦と同じく準和風フォーメーション。
コンサゴール裏では、この日から、サポーター手作りのマッチデープログラムが配られた。コンサOSCの、OUR PRIDE、ALWAYSの2クラブ共同で制作したプログラムには、今日の試合の見所、コンサ情報、サポーターズクラブ情報、応援情報などが載っている。今後も、試合毎に制作、配っていく予定とのこと。
試合前には、バックスタンドにコンサビッグフラッグも登場。天気によっては、今日は無理かもしれないと聞いていたので、晴れてくれて何より。やっぱ、ビッグフラッグいいねえ。
札幌の先発は以下の通り。4-4-2のフォーメーションは前節C大阪戦と一緒。DFは、村田、梶野、大野、田渕の四人。中盤は、太田、後藤、村主、バウテルの四人。太田がボランチ、バウテルがゲームメイクを担当。オフェンス陣は、深川、吉原のツートップ。控えは、加藤、渡辺、時岡、山橋、バルデスの五人。前節と同じ選手を先発に起用。ただ、怪我で戦線離脱した古川を除いては。古川のボランチのポジションに太田が入り、MFには村主がひさしぶりの先発。そして、今日は80%くらいの回復度合いのバルデスがスーパーサブとして控えに登場。バルデスはコンサに来て、初めてのサブ。
- FW:吉原、深川
- MF:太田、後藤、村主、バウテル
- DF:村田、梶野、大野、田渕
- GK:ディド
試合の方は、いきなり動く。前半2分。ゴール前に上がったボールに広島DFフォックス、GK下田、コンサFW深川が落下地点へ。一番最初にボールに触ったのがフォックス。ヘッドでクリア。のはずが、ボールは何と広島ゴールの中に入ってしまった。オウンゴールでコンサ先制。何かしらんが幸先がいいぞ。
思いがけない先制点で、リズムがよくなったか、再三広島ゴール前へ攻め入る。深川が絶好調と聞いていたが、この日もいい。再三、ゴール前に上がったボールに絡んでいた。前半20分。左サイドの村田から上がったボールに深川が合わせて、ヘティングシュート。これがゴール左へ外れるが、そこに走り込んできたのが、村主。広島ゴールにきれいに蹴りこんだ。2-0、村主うれしいうれしいJ初ゴール。試合はこの後は、お互い決め手に欠け、前半終了。
後半は、前半と打って変わって、広島ペース。広島の猛攻の前にコンサドーレは自陣から動けず。一方的に攻めまくられた。札幌ベンチ、これはイカンと考えたのか、後半15分、吉原に代えてスーパーサブバルデス投入。バルデス、途中出場は、初めてのことじゃなかろうか。吉原、ここまで、決定的なチャンスを二度ほど外していたから、この交代もやむを得ず。というより、深川の出来がよかった、と行った方がいい。しかしながらこの交代で、よりコンサドーレが押し込まれるようになってしまって、ベンチの思わく通りにはいかなかった。前線に走れる選手がいなくなったことで、コンサ陣内からのカウンター攻撃が見られなくなった。前線に二人、背の高いFWがいるので、両サイドからボールを上げなくてはならないのに、中盤のMFあるいは両サイドバックが両サイドに展開しないので、後ろからロングボールを前線に放り込むだけ。コンサドーレの攻撃にまったく厚みがなくなってしまった。
190cmを越えるフォックスとポポヴィッチをはじめ長身選手の多い広島に対抗するためとは言え、コーナーキックの時なども、深川、バルデスも自陣内に戻るため、前線にコンサドーレの選手は一人もいない(吉原はいつも前線に残っている)。札幌ボールになっても、上がる選手が少ない。前戦二人に、中盤の選手が一人から二人。いつも三、四人で、しかもど真ん中から攻めるだけなので、広島DFに簡単にはじきかえされていた。中盤がラインを押し上げないので、ベンチの指示なんやろうかと、思ってしまったが、もしそうだとしたら、後半開始早々から守りに入るのは、ちょっと消極的すぎやしないかい? せめてカウンターをねらうときは、あと二人ほど多く上がってほしいところである。逆に言えば、広島クラスの攻撃だから45分耐えきれたとも言えるし。
この日のコンサ、後半攻められっぱなしになったため、守備陣の働きが光った。まずよかったのが、この日試合後ヒーローインタビューでお立ち台に立ったGKディド。相手FWと一対一になること三~四度。ことごとく危ないという場面を止めた。さらに、やられたと思われるようなシーンで、ボールを止めたのが二~三度。今日のディドは、とにかくすごかった。こんだけすごいディド、ひさしぶりに見たような気がする。まさに鬼神の様な働き。
それと、センターバックに入っている大野。Jの試合がこの日で三試合目、センターバックとしては2試合目の大野。大野をピッチで見るのは、初めてだけど、良かったですね。大野は、2ndステージから、コンサドーレが採用した新しいフォーメーションの鍵となっているプレイヤーです。みなさん、2ndステージから採用している4-4-2は、これまでの4-4-2とは微妙に違っているって知ってましたか? コンサドーレが2ndステージから採用している4-4-2のフォーメーションでは、DFが四人で、中央の二人がセンターバックですが、この二人の動きが、1stステージまでの動きと異なっています。普通は(以前までは)、この四人は、ゾーンディフェンスで守るのですが、1stステージで、相手選手の速い動きに、DFのマークの引き渡しがついていかなかった反省からか、センターバックの一人を相手FWのエースにマンツーマンで、びったりつけます。相手のエースFWがどこに行こうとも、びったりマーク。残り三人のDFで、ラインを大野の動きに合わせて作りながら、さらに大野がつられてラインから外れた場合、ボランチの太田がそこをフォローする、3バックスと4バックスの中間のようなフォーメーション。バスケットボールで言うと、ボックスワンのような感じのフォーメーションです。
このフォーメーションにおいて、大野には相手選手に振り切られない速さと体力が要求されますが、うまくこなしていましたね。この日、マークについたのは、広島の久保。背番号10をつける広島の新しいエースですが、この日はほとんど仕事をさせてなかったですね。前節は、1stステージで痛い目に合ったC大阪のマニッチをマークして良い仕事していましたから、足のあるプレイヤーに対しても大丈夫なようです。大野は、守備陣のリーダーのような位置にいるわけではないですが、相手エースを殺してしまう働きは、コンサドーレの新しいフォーメーションには欠かせない選手になりそうです。今後は、FWが代表級になったときや、ゲームメーカーにもエースがいて、これを太田がマンマークに入ったとき、このフォーメーションでついていけるのかといった、心配がありますが、大野の今後の成長次第ではすばらしいセンターバックに化けるかも知れません。
心配は、マークが結構ハードなので(つかんで引っ張る)、審判によっては、イエローやレッドを食らって退場するようなことが、そのうち来るんじゃないかということ。相手選手を、おこらせることができれば、一人前といったところがあるので、何とも言えませんが(実際、マニッチも、この日の久保も切れてしまってましたね)。でも、DFの仕事は体を張って、ゴールを守ることだから、仕方がないかもね。
さて試合の方は、後半攻められっぱなしのコンサだったが、なんとか、しのいで、2-0の完封勝利。終わってみれば、4/15浦和戦以来の完封。そして、厚別競技場で、初めてJリーグのチームに勝った記念すべき日となった。チームは、下位チームが相手とはいえ、二連勝。他の試合が全てナイターだったため、夜9時までわずか6時間だったけど首位にも立った。結局、第2節終了時の成績は2位だが、それでも初めての2位。順位入れ換え戦の話もちらほらでてくる、2ndステージで大切なのは、下位チームには絶対負けないこと。上位チームに全敗しても、下位チームに全勝することが大事である。ジャイアントキリングもするが、取りこぼしも多いというチームキャラクターでは、少々厳しい。コンサには、このままの調子を維持しつつ、上位陣との対戦を迎えてほしいものである。
(以上記事:二上英樹)