『二上英樹の観戦記』
前節、神戸戦に勝って連敗を四でとめた札幌。今日は、J昇格後初の連勝がかかる試合。これまで、二回チャレンジしたが、ことごとく跳ね返された(G大阪後の横浜M、浦和後の名古屋)。今日は、三度目の正直となるのか?ここが一番の見どころ。
Jリーグは、W杯のため今日でひとまず中断。再開後の5試合を、勢いに乗って戦うにもここはしっかり勝っておきたい。今日は快晴。先週の川崎戦に比べれば、天国と地獄の違いがあるぐらい、今日の天気はいい。それなのに、それなのに、お客が少ない。試合直前になっても、空き空間が目立つ。アウェイゴール裏はまだしも、ホームゴール裏にまで空きが目立つ。結局今日は、5000人あまりしか人が入らなかった。コンサドーレの成績が悪いからか、相手が市原だからかは、わからない。
札幌の先発は以下の通り。3-5-2のフォーメーションは神戸戦と一緒。DFは、木山、ペレイラ、渡辺の三人。梶野が前節三枚目のイエローをくらい、今日は出場停止。代わって木山が先発。
中盤は、村田、バウテル、古川、時岡、田渕の五人。両ウイングバックに入るのは、村田、田渕。中央は、古川、時岡の二人がボランチに入り、バウテルがゲームメイクを担当します。今日が誕生日のマラドーナは、怪我がまだなおらず。前節に続いて出場しません。
オフェンス陣は、バルデス、吉原のツートップ。控えは、加藤、鳥居塚、村主、後藤、有馬の五人。有馬が初めて、トップに合流。出番はあるか。
- FW:吉原、バルデス
- MF:村田、バウテル、古川、時岡、田渕
- DF:木山、ペレイラ、渡辺
- GK:ディド
対するジェフは、武田がFWにいるものの、代表の中西は怪我で出場せず。昨年、天皇杯で戦ったときに、やられたマスロバルは、もちろん中盤にしっかりといる。GKには、一昨年コンサにいた白井がいる。
今日は試合開始前、選手入場のとき、バックスタンドで、コンサドーレのビッグフラッグが広げられた。室蘭初お目見えである。また、先の磐田戦のとき、Jリーグ100試合出場を果たした渡辺卓選手の表彰が行われた。
さて、試合開始。立ち上がり5分は市原の時間帯直、市原にゴール前に押し込まれる。その後、展開が五分五分になり、最初のチャンスは、コンサに訪れる。前半15分。中盤から前線にほうり込まれたボールをマイボールとしたコンサドーレは、バウテルとバルデスの二人だけで、市原DFを突破。バルデスがゴール正面から放ったシュートは、ゴール左隅に突き刺さった。早い時間帯の先制点に、スタジアムは大喜び。
先制点のあと、コンサドーレの時間帯が続くも、追加点が奪えず。この自分達の時間帯にかさになって攻めきれず、きっちり詰めができないのは、現在のコンサドーレの問題点の一つである。そうこうしているうちに、市原の武田にやられる。前半30分、左サイドを上がってきた市原の選手からゴール前にス~とセンタリングがゴロでほうり込まれる。ゴール正面にいた武田、フェイントでマークについた木山を置いてけぼりにすると、このセンタリングにきっちり足であわせ、きれいに決められてしまった。はたから見てると、何でそんな所にフリーでいるんや、てな感じだったが、マークについた木山の一瞬のミス。鮮やかに置いてけぼりを食らってしまっていた。
この武田にまたやられる。前半終了間際、後方からコンサゴール前にほうり込まれたボールを、武田がヒールキックでポンと浮かすと、マークについた渡辺がかわされゴール正面へ、ここに、コンサドーレのDFが三人つめて、混戦になるも、その中から武田がゴールにけり込む。ディドも反応できず、ネットに突き刺さった。混戦で倒れていたペレイラ地面をたたいて悔しがる。武田らしいといえば、これ以上武田らしいゴールはないというようなゴールだった。コンサ、先制するも、逆転され、1-2で前半終了するあまりいい展開とはいえない展開。後半はどうなることやら。
両チーム選手交代なしで始まった、後半。いきなり、コンサドーレが同点のチャンス。市原ゴール前に上がったボールをバルデスが高い打点から、ヘッドで落とすと、ボールは市原DFをかわした時岡の前へ。時岡とゴールとの間にはGKしかいない決定的な場面だが、市原DFこれを押し倒してしまう。主審の笛が鳴ってPK獲得。蹴るのはバルデス。ここんとこ、調子の上がらないバルデス。PKもあまり得意ではないので、しっかり決めてくれよ、とはらはらしながら見ていたが、ゴール中央上の方に思いっ切り蹴って決めた。2-2の同点。
早い時間帯に追いついたせいか、その後のコンサドーレの試合運びは、比較的おちついていた。でも、攻め切れず、ジリジリとした展開。試合が動いたのが、後半25分。非紳士でイエローをもらった市原のスコルテンが、この判定を不服として審判にくってかかった。これで、二枚目のイエローをさらに提示され、退場。市原10人になってしまう。これで、一気にコンサペースになるかと思われたが、そうならないところが、コンサドーレの問題点。ほっとしたのか、なんか、逆に中盤が機能しなくなってしまった。
フェルナンデス監督、勝負を決めるために、選手交代。後半30分に、木山に代わって鳥居塚投入。DFを4バックスに減らして、かわりに中盤の攻撃的ポジションに一人増やし、点を取りに行く。それでも、攻め切れず。さらに選手交代。後半40分、FW吉原に代えて、今季初登録の有馬が初登場。後半終了まで、積極的に攻めたが、試合を決められず。市原も防戦一方かというと、そんなことはなく、結構コンサゴール前にまで攻めてきて、危ない場面がちらほら。一人多い形で戦うのは、今季初めてのコンサドーレは、それをうまく生かしきれてないようだった。結局延長戦へ突入。
今季、延長戦では、三連敗しているせいか、いやな感じがした。スタジアムの雰囲気も、スコルテンが退場してからは、これでコンサドーレの勝ちといった感じだったから、なおさらである。ゲーム展開も、圧倒的に押しているといった感じでなかったのも、気になった点である。しかも市原には、ごちゃごちゃっとした中から、ワンチャンスでゴールを決める武田がいる。
延長戦が始まった。試合展開はコンサドーレが、人数の利を生かして7:3で支配するも、市原のカウンターにはらはらする展開。こうなると、どんな形でもいいから、決めてくれと祈らずにいられない。そして延長前半12分。ペナルティエリアの外、ゴール正面の辺りへボールを持ち込んだ田渕。ゴール前にいたバルデスへスルーパス。オフサイドぎりぎりに飛び出したバルデスがGKと、一対一。落ち着いてGKをかわしてゴールにボールを蹴りこんだ。Vゴ~~~ル。バルデスのハットトリックで、コンサJ昇格後、初の連勝を決めた。
さて、この日のコンサ、勝つには勝ったが、悪い面も目に付いた。というより、そればっかりが目について、もしかしたら今日も負けるじゃないかという心配を抱きつつ見ていたと言った方が正しい。全体に見ると、チーム戦術がまだ全員に浸透してないんじゃないかと思ってしまう(もう12節になるというのに)。攻撃陣と守備陣の間にぽっかりスペースが空く悪い癖はなおっておらず、こぼれたボールを拾うのは市原の選手の方が多かった。両サイドウイングバックのあがりも、前線の選手とポジションが重なることも多く、今一効果的でなかった。選手は、みんなボールをもってから、ボールの出す先を探している。だからボールが逆サイドに動くときも、3~4つもパスするはめになる。逆サイドに展開するのなら、1~2ぐらいのパスでつながないと、効果的でない。ばかの一つ覚えと言われてもいいから、このときは、選手全員がこう動くという形のある攻撃パーターンをしてもらいたい。
選手個人個人についても、いろいろ目に付いた。ゴール前でボールをこね繰り回す傾向のあったバルデス。今日は、いつもよりは少なかったけれど、やっぱりシュートが遅い。吉原は、今日は決定的なチャンスを結構外していた。初出場の有馬は、今日見ただけでは何とも言えない。中盤をみると、時岡は、パスの精度が悪かったし、古川は守備のとき、たびたび最終ラインに入り込んでしまっていた。このため、三人のDFに、両サイドWBを加えた5人にさらに、古川が加わって6人が一列になってしまうという、まずい状態が生まれてしまっていた。スコルテン退場後、鳥居塚投入によって、四人に増えたにもかかわらず、中盤になぜかしらんぽっかりとスペースが空く。両WBの出来も今日は今一だった、タイミングのいいオーバーラップは結構見られたものの、村田のセンタリングはうまくボールが浮かないし、田渕のセンタリングは、精度が悪く、前線のFWにつながらない。今日のVゴールをアシストしたのは、田渕だったが、見ていた感じでは、あれはシュートを打ち損ねて、たまたまバルデスへ通ったものと、個人的には思っている。DFに関しては、相手FWを倒してFKを取られてしまうことの多いストッパーの二人だが、今日は比較的そのような場面は少なかった。でも武田一人にいいようにやられた感がある。
成績が悪いため、補強の話もうわさに上っているが、一人増えたからと行って、それだけで、チームが強くなるわけでない。選手個々人の細かいレベルアップも必要で、それがなければ、強いチームは生まれない。W杯に伴う中休みの間にしっかり立て直してほしい。それと、ビッグネームに名前負けしない、自信と不敵さもしっかりつけておいてもらいたいものである。
(以上記事:二上英樹)