『谷口恭さんの観戦記』
「勝手な観戦記」
この日と次の日は休日だったので、仙台へ行く航空機と、帰りの寝台列車 のチケットは、3週間ほど前に予約しておいた。ホームゲームに行くのに、 ここまでしなければならないとは!
航空会社はもちろん「JAL」で、試合開始に間に合う最も近い便を選んでも、かなり時間を持て余しそうだが、義理は欠かせない。チェックインをしてゲートで待っていると、柳沼氏が現れた。そして、何と幸運なことに、「コンサドールズ」と一緒の便だった。JALなんだから、当然と言えば当然だが。
仙台空港へ降りると、路面が濡れていた。午前中に低気圧の通過による降雨があった証拠だ。とすると、午後はどんどん気温が下がっていく。これは統計的に、コンサに有利な気象条件である。仙台駅内で食事をした後、駅の中をうろついていると、「Jリーグだ」という言葉が耳に入ってくる。今日、何があるかを仙台市民も知っていた。
地上を走る地下鉄の車内から見えるスタジアム、そして終点駅で下車後、徒歩4分という、羨ましい立地条件、札幌にもこんな競技場が欲しい。実は、4分というのはホーム側の入口までで、アウェイ側の入口までは、かなり遠い。何という親切、と言うか、利己的な配慮!
スタジアムの前のテントで「コンサグッズ」や「浦和グッズ」を売ってい た。やはり、ここが札幌ではなく、仙台であることを思い知らされた。腹いせに、浦和のユニフォーム型クッションを買って、尻の下に敷いて開場 を待っていた。
仙台スタジアムは観客席の部分だけ天井があり、声の反響が大きい。現 場では気が付かなかったが、録画したビデオでは、コールがこだまして帰っ て来る時間差が大きかった。
浦和サポーターの声はさすがにデカかった。前回の鹿島の比ではなかっ た。しかし、声の質は粗野だった。彼らが初めて見た「コンサドールズ」 をどう感じたのか興味深い。「スポーツは文化であることを学んだ」のか、 「サッカーを侮辱していて許せない」のか・・・。
浦和の攻撃はパスミスが多くてチグハグだった。球回しはコンサドーレの方が 支配していて、前半は「0-0」で折り返した。ヨッシ!ハーフタイム に浦和のゴール裏へ偵察に行った柳沼氏によると、浦和は最初からコンサを なめていたそうだ。「勝ち点3」を当然のことのように信じていたらしい。
後半もコンサペースだった。岡野より宏太の方が足が早かった。その 結果、ペナルティエリア内へ切り込んだ宏太が、苦し紛れのタックルを受け て倒された。本来はブーイングをすべき場面だが、大喝采だった。宏太 でさえ笑って喜んでいた。
PKはバルデスが蹴るらしい。前節でのPK失敗が頭をよぎる・・また バルデスかよぉ・・・。決して、見事なキックではなかった。相手GK が逆に飛んだから入った。GOAL!先制点を奪った。
すかさず、次はバルデスが持ち込み、相手ディフェンスを2人引き付けて、 中央の宏太にパスを流した。ゴール前は無人だった。宏太が合わせたボ ールは、あざ笑うかのようにゴールマウスに転がって来た。この2点目で 浦和サポーターは完全に頭に来た。
試合終了間際は、ウーゴがコーナーポール付近でボールをもてあそび、じ れて寄せて来た相手にボールを当てて、CKを取るプレイの繰り返しだった。 余りの不甲斐なさに、浦和サポーターの怒りは頂点に達し、ユニフォーム を脱ぎ捨てて、上半身裸で「コンサドーレ」コールを送るという暴挙に出た。 下馬評で「2弱」だったチームを相手に「2-0」の完封負けでは無理も 無かろう。
試合終了後は、応援に協力して頂いた仙台市民に、「ブランメル仙台」と 「ソニー仙台」のエールを送った。
仙台駅前の居酒屋で祝勝会を行った。「ドールズと合コン」という案も 出たが、実現はしなかった。約30名が参加し、「Jリーグで2勝目」と 「完封勝ち」を祝して、山本氏の音頭で乾杯した。私は「北斗星」で帰るので祝勝会は中座したが、寝台車のサロン室にサポ ーターが集まって飲み直した。夢の中の出来事ではないことを祈りながら 幸せな眠りに就いた。
(以上記事提供:谷口恭さん)