『横浜の渡辺さんの観戦記』
いろいろな意味で難しい試合でした。
相手がJリーグで、かつ相手のホームであったこと。チームの主力であるバルデスとウーゴを欠いていたこと。契約更改が不調で選手の士気に少なからず影響を与えていたこと。チームを離れることが決まっている選手を出場させざるを得なかったこと。今期の最大の目標であったJ昇格は既に果たし、大きな仕事を終えてしまっていたこと。天皇杯でもとりあえず2つ勝って三回戦まで進出し、少なくとも昨年と同じ成績は残せたこと。地元では冬期に入り、広々とした屋外での戦術的練習ができなかったこと…。数え上げていけばまだまだ出てくるでしょう。この段階から更に勝利を積み重ねるにあたってブチあたるネガティブな要素は。
それでも日本最古の歴史を誇るサッカートーナメント「天皇杯」は、日本のすべてのサッカー選手が目標とすべき大会です。プロ、アマ関係なし。勝っても賞金はなく、ひたすら元日の国立での戴冠は「サッカー日本一」の名誉のみ。コンサドーレの選手たちにこの大会に挑む「サッカー少年」としての本能は、どの程度存在しているのでしょうか。
結果から書けば0-1の敗戦です。スコア的には惜敗です。コンサに得点の決定機がまるでなかったわけではなく、市原の出来も良かったわけではありませんでした。
コンサドーレのスタメンはGKディド、DFにペレイラ、渡辺卓、古川、MFが田渕、朝倉、村田、後藤、吉成、FWは吉原と黄川田でした。嬉しかったのはユニフォームがホーム用の赤黒の縦縞だったこと。アウェイ担当のサポーターとしてはなかなかお目にかかれないホームユニ。個人的には古巣との対戦になる後藤と、チャンスを与えられた黄川田に注目していました。顔ぶれからするとベストに近い市原がボールを支配し、コンサドーレはやや引いた位置からカウンター気味に攻め手をみつけようとしています。コンサドーレが自分たちのペースをつかめないうちの前半14分に、右コーナーキックからファーサイドに流れたボールを日本代表から戻ってきた中西に蹴り込まれ市原に先制を許しました。これで目が覚めるだろうと思って見ていましたが、やや支配率が高くなった程度で決定機には持ち込めず。おまけにこの天皇杯のラッキーボーイ的存在だった吉原が右足を痛め、前半23分にしてピッチを後にしてしまいます。代わった石塚が個人技でタメを作り、黄川田が数回思い切りのいい突破で見せ場を作るものの前半はこのまま終了。ただし前半終了間際に江尻がきょう2枚目の警告で退場となっており、後半は11人対10人。コンサにとっては厄介な壁になっていたスコルテンも負傷退場しており「絶対に追いつける!」と後半に臨んだのですが…。
1人多くなった分だけボールを持てるようになったコンサ。いや、戦術的に「持たされている」と言い換えた方がよかったかも。中を固める市原に対して有効な崩しを仕掛けることが出来ません。もっと外(特に右サイド)からの展開が欲しかったところです。ここしばらく広いピッチでの戦術的練習ができなかった影響が出ているのか、何をしたらいいのかわからず中盤をウロウロするだけの選手もいたり…。最終ラインも渡辺卓の出来が非常に悪く、簡単なクリアをミスしてピンチを招くことも。周囲との噛み合わせに難があるにせよ、時折り輝いていた吉成もガス欠気味。黄川田に至っては前半から飛ばしたツケが回ってきて、後半開始しばらくしてからは試合から消えてしまいました。
「せめて山橋がいれば…」と思った人も多いでしょう。しかし彼は天皇杯の登録からは外れているため出場できません。サブに本来のFWの選手は1人もおらず。仕方なく(?)石塚と鳥居塚の2トップにしますが、これが全然機能しません。どちらも2列目に置いて働ける選手であることは明らかだと思うのですが…。それでも後半40分頃には左サイドからの崩しでゴール右サイドへ流れたボールが石塚の前へ! …しかし大きくワクを外れため息。ロスタイムに入って得たコーナーキックには「究極の最終兵器」ディドのゴール前への上がり。あの川崎F戦を思い出すシーンでした。しかも今回はゴール前の混戦からシュートまで放ちました! が、なんとクロスバーを直撃。最後の抵抗も空しく試合終了と、同時にコンサドーレの1997年の終了を告げるホイッスルが響きました。
朝倉と吉成とはこれでお別れ。石塚ともたぶん同じ。多少の感傷が含まれていたとしても、ちょっと淋しい試合でした。わずかに心暖まったのが試合後の市原サポによる「後藤コール」と「コンサコール」でした。後藤は古巣を相手に健闘したと思います。前半にはゴール前で決定機もありました。残念ながら左足での体勢を崩しながらのシュートはGK下川の正面。でも試合後の人気はナンバー1。彼が市原に残してきたものの大きさを感じずにはいられませんでした。
ああ…。でも仙台スタジアムでの四回戦に行きたかったなぁ…。これでしばらく「生コンサ」を見る機会はないわけですね。周辺にあまりいい話題が無いこのオフですが、しっかりと寒さに耐えて3月の開幕を待ちたいと思います。
(以上記事:横浜の渡辺さん)