『横浜の渡辺さんの応援記』
序文・今回は「応援記」です!
大敗の山形戦、辛勝のデンソー戦。J昇格内定を目前にしてパッとしない試合が続く昨今のコンサドーレ。「プレッシャーか?」「どうした?」とマスコミもサポーターもかまびすしい。マスコミはともかく、こんなとき我々サポーターがやることといったら「ひたすら応援」。これしかないでしょう。
と、いうわけで行ってきました徳島へ!前期の鳥栖での2試合には行けませんでしたから、筆者にとっては今期最長距離の「遠征」ということになります。仕事で何度か訪れていた馴染みの地でもあって、日程が発表された時点で「昇格」とか「優勝」に関係なく「あ、行こうかな」と決めていたのです。早期割引で航空券を買った8月の段階ではコンサドーレは独走で前期を折り返していましたので、「もう消化試合になっているかな?」などとも思いました。それならそれでもいい。渦潮見物してうどんを食べて、試合は久々の一観客モード(笑)でのんびりと見ればいいや…と思っていたものです。ところがご存知のこの状況。ほのぼのムードは捨てて、とにもかくにも気合入れて応援すべし! とあちこちに吹聴し、ホームサポから託された横断幕まで抱えて臨みました。
「何が何でも勝つんだ! 勝って“王手”をかけてチームを札幌に返すんだ!」という気合で、試合中は終始声援を送りっぱなしでしたので、細かいゲーム内容ははっきり言って覚えていません(笑)。でも、地元ケーブルテレビ徳島の映像をUHBが買って、深夜に北海道ではTV放送があったそうですから、だいたいのみなさんは試合内容については把握していらっしゃるでしょう。よって、今回の筆者のレポートは「観戦記」というよりも「応援記」に近いものになってしまいそうです。ご容赦ください。
阿波路の王手戦
本田、山形とアウェイで連敗し、「きょうこそは勝利を!」の決意を胸に徳島空港へ降り立った関東サポーターは、筆者の他、さとうさんとこまつさん。山形にも遠征し気心が知れた3人は空港でレンタカーを借り、徳島での足としました。偶然空港で会った札幌からのEveの佐藤さんにも声をかけ、まずは市内へ向かいます。筆者が試合後泊まる予定のホテルに届いている横断幕を受け取り、徳島名物のうどん屋さんで腹ごしらえ。「球技場は山の中で飲食物は手に入らない」という情報を元に、道中のコンビニで仕入れを済ませてクルマは西へ。「本当にこの先に球技場なんかあるの?」と不安になるほどうねうねとした道を上ったところにゲートがありました。ここでクルマを一旦降りて、設置されているテントで入場券を購入…と、思ったら係のおねーさんがわざわざやって来てくれて、当方クルマに乗ったままチケットとお金をやりとり。早い話が「ドライブスルー」状態。長い間色々なスポーツ興業を見てはいますが、「こんなのは初めて」と笑いながらゲートを入り、球技場すぐ横の駐車場に降り立ちました。
到着するなり北海道からの報道陣の多さにビックリ。今日が「Xデー」になる可能性があったわけですから、この一戦を逃してなるものかと大挙してやって来たようです。前述のようにTV放送も決まり、更にはNHKラジオの生放送も。新聞記者やニュースの映像素材用にベーカム(業界用語)担いだクルーがスタンドやピッチをうろうろしています。
ここで10月12日(日)にコンサドーレの2位以内確定(J昇格内定)とJFL優勝が決まるはずだった条件を整理しておきましょう。コンサドーレの勝ち点はこの時点で64。東京ガスと本田技研は56で、川崎Fが55で続きます。残り試合は4チームとも4つ。90分勝ちを続けた場合、東京ガス、本田は68点、川崎Fは67までしか勝ち点を伸ばせません。ですからコンサドーレはあと勝ち点で5、勝利数で2(90分勝ちと最悪でも延長勝ち)を得れば優勝が決まる状況なのです。そしてこの日の徳島戦で90分勝ちすれば勝ち点は67。東京ガス、本田が負けるかPK戦までもつれて、勝ったとしても勝ち点1しか挙げられなかった場合、川崎Fが勝ち負けにかかわらず延長戦まで行ってしまった場合、いずれもこの日を終えた時点で勝ち点は57以下ということになります。残り3試合で得られる最大の勝ち点9を得ても66止まり。よって27節終了時に勝ち点57以下のチームが上記3チームのうち2つ発生した場合、コンサドーレの2位以内が確定します。と、いうことは、もしも3チームとも57以下に留まってしまったら、一気に優勝決定という可能性もあります。
そこで取材の方々はバックスタンドに陣取ったサポーターに「今日、決めたいですよね!」と水を向けます。筆者も数社の取材を受けましたが答えは同じ。「決まりましぇ~ん」この日は王手だけでたくさん。一番おいしい感激の瞬間は、満員の観衆が見守り、街全体で熱く燃え上がる札幌・厚別で決めてもらいたいものです。コンサドーレが札幌にやってきた意味、多くの地元の人たちと歓喜を分かち合う素晴らしさ、プロ・チームが身近にあることの喜び、誇りといったものを考えるにつけ、「必ずや厚別で!」と期待しておりますし、その可能性を確かなものにするために目の前の一戦を全力でサポートすべく飛んできたのですから。
とはいえあらゆる事態に備えておくのもコアなサポーターの役目(?)。「コンサライブ」では永井さんを川越の「NTT関東-本田」に、関東サポの田中さんを仙台の「仙台-川崎F」に派遣し、携帯電話で逐一試合の動きを追っています。いつも永井さんが担当する競技場からの実況速報は「セルジオ越前」こと濱中さんがバックスタンドから行います。そして他会場の速報はコンサ・サポ席の小さなホワイトボードにも書き込まれるという本格的(?)なもの。さらに筆者を始め数人はバッグの中に数本の紙テープも用意していたのでした。「優勝もしくは2位以内確定となった場合」に投げ入れるべく、球技場係員の方と相手徳島のサポにご了承いただいていたのです。
結局札幌からも20人ほどがやってきた試合前のサポ席の雰囲気はいつも以上の期待と不安が入り交じったもの。「不安」とは先の山形戦レポートでも触れたように、後期のアウェイ戦はすべて前半の早い時間帯に失点を許していること。それが後期アウェイ2勝3敗につながっているわけで、今日こそは先手を取って試合を優位に進められるよう応援も最初から飛ばしていこうということになりました。
山の上にある徳島市球技場。天気は晴れ。ただし風が強い。バックスタンドの我々から見るとメインスタンドやや右(1時方向)から断続的に強風が吹き付け、せっかく貼った横断幕もめくれ上がるほど。セットした大旗も危険なためとても振り回すことができず、支えているのがやっと。
試合前の徳島の控え選手による「フットサル教室」も終わり、午後2時が近づき、選手がピッチに現れました。いよいよ阿波の国でJリーグに「王手」をかける一戦が始まります。
風の中のバトル
コイントスに勝ったごっさんはわずかに風上となるエンドを選択。バックスタンド・サポ席から見て左側。つまり我々に近いエンドのゴールに攻め込みます。チームにも「先手必勝」の意識があるようです。キックオフから果敢に攻め込み最初のシュートもコンサ(ウーゴ? たぶん)。心配されたカウンターへのケアはペレイラが中盤までやってきて、高い位置で反撃の芽を摘みます。田渕、村田の両ウイングバックもガンガン上がり徳島を圧倒。
そして前半3分。早くも待望の先制点が生まれます。中央からウーゴが右サイドへ送ったボールに田渕がよく追いつきセンタリング。逆サイドへこぼれたところに村田が詰めて得意の左足でスパッと蹴り込みました。いきなり盛り上がるサポ席。前期の対戦(5月15日/5-1で大勝)のように大量点の予感さえ漂いましたが、直後、思わぬ事態が。
10分を過ぎたあたりの好機でゴール前まで進出していたペレイラが足をひきずるようにして自らピッチを出ます。「あのペレイラのことだから大丈夫だろう」というサポ席の希望的観測をよそに、浅沼がアップを開始。脳裏には山形での太田負傷のシーンがよぎります。いくら首位独走でゴール目前とはいえ、これ以上の戦線離脱は勘弁してほしい。結局ペレイラはプレー続行不可能で浅沼と交代。コンサドーレのフォーメーションは一応4-4-2になりました。「一応」とは、その後の展開上両サイドバックになった村田と田渕が積極的に上がり、空いたスペースを埋めて最終ラインのバランスを取るために、ボランチの朝倉がたびたび最終ラインをケアし3-5-2気味にもなっていたため。その前にはごっさんがいつもより下がり目に位置して汗をかき、浅沼は「中盤の中盤」を比較的自由に動き回りました。これが本来の位置なのか、まるで水を得た魚のように豊富な運動量を武器に攻守あらゆる局面で顔を出します。
リードを許した徳島も札幌DFの裏にロングボールを送って基点を作り、エース関口にボールを集めたびたびコンサドーレの肝を冷やします(関口はJFL得点ランク12点で日本人ではトップ!)。しかしラストパスやフィニッシュの精度が低く、ディドの牙城は崩せません。一方のコンサも攻撃を担う前線の3人がいまイチ。いつものように密着マークされているバルデス。その分貪欲にゴールを狙わなければならない新村。そして好機を演出すべき立場のウーゴの3人の歯車が微妙に噛み合いません。得点王レースで34点を挙げて「別世界」を走るバルデスも、ことアウェイに限ってはあの「奇跡第2幕」の等々力のハットトリック以来音なしです。新村も前節のデンソー戦を始め、ここのところ再三あった絶好機をフイにしてきたからか、プレーにいまひとつの思い切りが足らないようです。「早くコンサで1点を!」の思いが強いのはわかります(注:新村はナビスコカップ予選リーグで2得点を挙げていますが、JFL公式戦ではまだ無得点です)。彼にとって残念なのは13節の刈谷でのデンソー戦の得点が敵DFに当たって「オウン・ゴール」と記録されたこと。明らかにゴール枠に飛んでいたシュートであり、後期からの世界的なルール改正によれば「企シュート者の得点」と記録されるものだったのです。この日は焦りからかオフサイドを取られる場面も目立ち、そればかりか相手DFとの競り合いで手を出したか何かで早々に警告までもらってしまうありさまでした。
そんな中、必殺のラストパスやフリーキックは不発に終わったウーゴでしたが、運動量の多さにはちょっと驚かされました。いつものアウェイゲームの5割増しくらいで動き回り、タッチライン際まで相手にチェックを仕掛けていきます。彼にしても足の状態が思わしくないのですが、そんなウーゴの姿に触発されたか、コンサイレブンは全員が「ファイト」しました。「優勝」「昇格」といった大きな目標に向かって、一丸となって攻め、そして守りました。サッカーは何が起こるかわからないとはいえ、もうこの時点で「絶対に今日は勝てる。仮に追いつかれても今日のこの気迫なら突き放すに違いない」と確信しました。
前半は双方にいくつか決定機があったもののスコアは動かず1-0で折り返しました。久しぶりにやけに短く感じた45分間でした。
龍の恩返し
ハーフタイム。1時間早く始まっていた仙台での試合結果が入ってきました。川崎Fが3-2で仙台を寄り切り。東京ガスも2-0で前半終了。本田はNTT関東と前半0-0。いずれにせよこれできょうの「優勝」はもちろん「昇格」もほぼナシ。この一戦を確実にモノにすべく後半の応援に集中することにしました。
若干の風下になる後半、今度は徳島の時間帯。積極果敢に両サイドのスペースを狙い、コンサDFも体を張って食い止めます。気合が入りすぎて与えた右45度のフリーキック(渡辺卓に警告)を直接狙われてヒヤッとはしましたが、ディドが拝み取り。その後も続く徳島の攻勢。水際で防ぐコンサ。ウーゴや浅沼までが戻って耐えに耐えています。ここにきてペレイラ不在の穴が大きくなってきたようです。
守備がそんな状況ですからとてもいい形で攻撃に切り替えられません。最後尾から前線までが間延びしてしまい、有効な組み立てができず苦しいコンサ。ただ、同じように長い距離を走らねばならない両チームにあって、わずかづつスタミナの差が出るようになりました。とりわけ途中出場とはいえ前半15分からの投入で、ほとんど先発と変わりなかった浅沼の動きが一層光るようになり、彼の頑張りからコンサドーレは試合の波を引き戻し始めます。積極的にミドルレンジからのシュートも打ち、「バルデス頼み」のコンサ攻撃陣に喝を入れ、一方では相手ボールへのフォアチェックから両サイドに有効なパスを配給するなど、試合出場数は少ないなれど今期最高の出来では? と思えるほどでした。さらにそうしたチャンスメイクに守備にと縦横の活躍をした選手がもう1人。先制点を決めた村田でした。危ない局面には必ず顔を出し、勇敢なタックルやクリアでチームを救い、マイボールと見るやタッチライン際を爆走し、Pエリア付近でも勝負をかけます。前期終了後思い切った手術を敢行した甲斐あったのでしょう。疲労はともかく痛みの不安がなくなったここ数試合の動きは、多少贔屓目もあるにせよ「代表で相馬と競わせてもいいのでは?」とすら思わせるくらいです。 サポ席は後半の半ば頃からほとんどノン・ストップで声援を送り続けました。人数ははるかに少ないながら、あの等々力の川崎F戦を思わせるような全員一丸となったもの凄い応援でした。早くから「戦闘モード」を宣言していた筆者も次々とコールをリード。山形では途中でキレてしまった西くんも、試合後泣き崩れた中西さんも力の限りタイコを叩き続けます。後日ラジオ中継を聞いていたという札幌の友人によれば「札幌の応援しか聞こえてこなかった」そうです。そりゃそうだ。こっちは死ぬ気で声援を送るべく、不測の事態に備えて携帯用の酸素ボンベまで持ち込んでいたんだから(本当!)
サポ席の熱い思いが届いたのか、待望の追加点が入ります。疲れから徳島イレブンのサイドのケアが薄くなった後半35分。マラドーナが右に流したパスに田渕が走り、今度はそのまま持ち込んで左足でゲット。コンサ移籍後初ゴールを故郷徳島で、また古巣を相手に決めました。ゴールしたエンドは徳島サポ席の目の前。痛烈な「恩返し」で得点は2-0。がぜんコンサ有利に。
点差を広げてもどこかの代表チームのように(泣)逃げ切りに入ることなく、すかさず石塚を投入して最後まで攻めの姿勢を貫くコンサ。「なんとか1点を」と次々に放たれる徳島のシュートをGKディドやゴールポストがナイスセーブ(汗)。試合はそのまま終了。アウェイでは約1ヶ月ぶり(西濃運輸戦以来)の勝利の歌声がサポ席に響きました。しかも6月の鳥栖戦以来のアウェイでの完封勝利。ペレイラの怪我と、警告をもらって次節累積3枚で「若」石塚が出場停止になったことが残念でしたが、首尾良く勝ち点3をゲットし、「昇格」「優勝」へ大きな大きな前進となりました。
得点を決めたのは両サイドのウイングバック。しかも筆者がこの日ダンマクを預り、この手で貼った2人の選手だったのです。(「左WBの忍者 村田 達哉」と「龍」の2つ)こういうのってサポーター冥利に尽きますよね。
書き漏らし棚ざらえ
試合後の一番人気はやっぱり田渕。さっそく球技場前では地元の子供たちと集合写真を撮ったり、老若男女から次々に差し出されるサインや写真の依頼に休む間もなく応えていました。試合よりもたいへん(?)。
その田渕の活躍に徳島サポーターは複雑な表情。「すっかり札幌の人になっちゃいましたねぇ」「ボクらの(気持ちの)中では今でも“花垣龍二”(旧姓)なんですよ」と。およそ11ヶ月ぶりの故郷での試合(昨年の天皇杯以来)で元気な姿を見られたのは嬉しかったにせよ、試合のとどめを刺されてしまうとはなんとも皮肉な結果でした。気を取り直して双方のサポーター数人で記念撮影。JFLってのどかでいいですね(笑)。
試合終了後のサポ席への挨拶の写真にバルデスがいません。実は終了間際にハイボールを相手選手と競り合って着地した際に腰(だと思う)を強打。立ち直った後はオーバーヘッドキックを披露しましたのでたいしたことはなかったと思いますが、終了後はまっすぐ治療に向かったようなのでした。
サポ席への挨拶といえばもう一人の徳島からの移籍組である古川は、わざわざ徳島側へも向かったそうです。温かい拍手が送られたとか。コンサドーレの石井ヘッドコーチも昨年までは徳島の総監督だった人物。来年は田渕を含めて3人、「オオツカ魂」を胸にJの戦地へ向かいます。応援よろしくお願いします。
試合後の選手たちは一旦空路大阪へ移動するようで、バスは徳島空港へ向かいました。徳島に宿泊することになっていた筆者も、当日帰京のさとうさん達とともに空港内のレストランで軽く祝勝会を行うつもりで選手のバスを追うように空港へ。当然のことながらくつろぐ選手たちとも顔を合わせてしまいました。ユニフォームを脱ぎスーツ姿で団体行動をしている時間は、オフィシャルとプライベートの境い目あたりでしょうから、あまり選手たちに目立つ位置に席を取りたくなかったのですが、よりによって村田選手とペレイラ選手が談笑する席のすぐ近く(だってそこしか空いていなかったんだもん!)に6人で座りました。僕らはビールで乾杯。すると村田選手もペレイラ選手もその気配に気づいたのか、手持ちのグラスを掲げて乾杯ポーズ。2人ともい~い人だぁ!
最後まで黙ってお見送りするつもりでいましたけれど、どうしても気になったのでペレイラ選手に試合で痛めた足の具合を聞いてしまいました。「チョットいたい」と日本語で答えてくれました。心配です。
結局出番のなかった紙テープは札幌からの遠征組に託しました。関東サポーターの魂をこめて、22日、厚別での感動の瞬間に思いっきり投げてください!
(以上記事:横浜の渡辺さん)