[第22節]in厚別:東京ガス戦(写真付)

『二上英樹の観戦記』

待ちに待った?東京ガス戦がやってきた。コンサドーレの天敵とも言える東ガスには、東芝時代から続けて6連敗。ここ三年の間、負け続け、昨年は帯広に迎えたホームゲームでも0-1で負け、ホームアイランド無敗神話を見事に打ち砕いてくれたチームでもあります。戦力アップして望んだ今シーズン、今年こそ雪辱と望んだ、江戸川競技場での東ガス戦。なんと返り討ちに合ってしまい、シーズン初の黒星をつけられてしまいました。その時からサポーターの思いは一つ、”厚別でなら絶対負けない”。そして、その日がやってきました。三年分の思いを、のしつけて返し、来年Jに昇格した暁には、JFLに忘れ物をしたといわれないよう、”今日は勝たせてもらう”。
さて、この日の試合、平日のナイターなのに13218人を集めました。前売りチケットの段階で1万枚がはけたそうで、SS指定席は前売りの段階で売り切れた(最近はSS指定席はかならず売り切れる)。しかも、ゴール裏席には、ナイターなのに意外に子供たちが多い。試合が始まるまでの間に、みんな御弁当を広げて食べている。この日は、コンサドーレのスポンサーの石屋製菓のお菓子の名前を冠した”白い恋人”スペシャルデー。石屋製菓から入場者全員に赤黒のポンチョがプレゼント。これをみんなかぶるものだから、満員になった観客席は、赤黒一色(いや二色か)。ピッチの選手にはどう見えたのだろう。そしてもう一つの出来事は、今シーズンのホームゲーム観客数が10万人を突破したこと。平均観客数は9000人を越え、好調です。

札幌の先発は以下の通り。前節の西濃運輸戦で、三枚目のイエローをもらった後藤は、今節出場停止。代わりに後藤のポジションに浅沼が入りました。今季は、右のウイングバックとして起用されることが多かった浅沼ですが、今日は、後藤の代わりということで、本来の攻撃的MFのポジションに入るようです。そして、キャプテンマークを太田がつけました。フォーメーションの方は3-5-2で、従来どおり。戦術面での変更は無いようです。

FW:山橋、バルデス
MF:村田、マラドーナ、太田、浅沼、田渕
DF:古川、ペレイラ、渡辺
GK:森
控えには、新村、鳥居塚、石塚、朝倉、赤池の五人。今日は、控えにDFがいない!?。
一方、東京ガスは、アマラオのワントップで、4-5-1の守備重視のフォーメーション。東京ガスのカウンターの鋭さはJFL一なだけに要注意。しかもアマラオは前節川崎F戦で、一人で4点決めて、難敵川崎Fを下しているだけに、さらに要注意。
試合の方は、19時に定刻どおり開始。これまでのお返しとばかり、いきなりコンサペース。どちらかというと様子見の東ガスに対して、積極的にしかける。前半5分、センターサークル東ガス陣側で、浅沼がこかされフリーキック。蹴るのはペレイラ。ペレイラの弾丸シュートは、東ガス選手の壁にあたって(痛いぞ、あれは)、そのままゴールバーをこしてしまうも、コーナーキックを獲得。左コーナーからのマラドーナのキックに合わせたのはバルデス。ほぼゴール正面で、ジャンプ一番、頭一つ(いや三つぐらい)抜け出したバルデスの頭に、ドンピシャのタイミングで合ったボールはゴールネットにつきささります。前半6分、1-0、先制です。守備的な陣形からのカウンターを得意とする東ガスに対して、大事な先制点をゲット。しかも早い時間帯に取れたことで、今日はコンサペースで大勝か、と思わせてくれました。案の定、ここからしばらくはコンサペースで試合が展開。早い時間での先制点で、観客のボルテージも一気にヒートアップ。コンサドーレの押せ押せの猛攻が続きます。
一点先制の興奮もさめやらぬ、数分後、左サイドの村田からバルデスへ、さらに山橋へとボールをつなげ、山橋ゴール正面からミドルシュート。蹴られたボールは、ゴールバー→真下のゴールラインの上→跳ね返って戻ってきた。という軌跡を描き、ノーゴール。観客一斉に”入ってる、入ってる”のブーイング。でも、判定は当然覆らない。この他にも、何回かチャンスはあったが、得点に至らず。
コンサペースの試合の風向きが変わりはじめたのは、前半も30分を過ぎたあたりから、ペレイラがハードタックルでイエローを取られた頃から。コンサドーレの守備陣が、なんかおたおたしはじめる。マークにはついているもののなんか変で、安定感がない。マークの受け渡しなんかがうまくいかず、東ガスの突破を許すようになり、危ない場面もたびたび。

この日の東ガスの攻撃は、アマラオ1トップのフォーメーション。このアマラオのマークは、ほとんど渡辺が行っていた。このアマラオというプレーヤー、今日初めて見たのだが、違っているかもしれないが、見た感じを述べてみる。ポジションはFWだが、コンサドーレのバルデスや、川崎Fのムタイルのようなセンターフォワードタイプというよりは、川崎Fのベッチーニョにプレイスタイルが似ている。つまり、常に前線にいるのではなく、二列目、三列目に下がって、ゲームを組み立てることもできる器用なプレーヤーといった感じを受けた。札幌のバルデスも下がり目の位置に入ることがあるが、あれはゲームを作るというよりも、ボールをもらいに下がっていると言った方が合っている。東ガスのすごい所は、アマラオの1トップの時の、攻撃パターンの他に、アマラオが下がったときの、攻撃パターンを持っているところかもしれない。
ゲーム始まって、しばらくは、アマラオの1トップだったが、途中から違うフォーメーションも出始めた。コンサドーレはこのフォーメーションにかなりてこずっているようだ。どういうものかと言うと、アマラオが前線からスーっと二列目に下がる(このとき、マークについている渡辺なんかを引き連れていく)。と、空いたスペースに、東ガスの選手が両サイドから走り込むのである。大体決まった選手が走り込んでいたが、5人もいるMF、結構、好き勝手に選手がかわるがわる走り込んでいた。新たに走り込んでくる選手にマークがつかなくてはならないのだが、コンサドーレが採用している3バックシステムは、実は、こんなポジションチェンジを多用するチームには弱いんですよね。
3バックシステムは、ツートップのFWにマンツーマンが基本だから、強力な二人のFWを介するチームとの対戦では、その機能を十分に発揮するんですが、決まったFWを置かず、ポジションチェンジを多用するチームには、あるいは、二列目の選手が頻繁に飛び出して来る場合は、マークの受け渡しを頻繁に行わなければいけないので、システムとして苦手と言うか相性が悪いです(日本代表の3バックシステムも二列目の攻撃参加に対してはもろいですよね)。
この日のコンサも、ディフェンスラインが崩されること多々あり、かなり苦戦していました。前半途中から、ペースは東京ガスへ。コンサドーレが攻めているように見えても、東ガスの戦い方はカウンターが基本だから、相手に攻められることにはなれている。むしろ、コンサドーレが前がかりになっていきつつあるのは、東ガスにしてみれば、罠にかかりつつある獲物の様なもの。それでも、前半は、このまま一点リードのまま終了。前半序盤、あんだけ押せ押せだったのに追加点が入らなかったこと、そして、このような展開は、まさに東ガスペースということ。この二点が気になったものの、ハーフタイムに、西が丘で行われている川崎vs本田戦で、2位の川崎が負けているとの放送を聞き、すっかり、そんな心配はふきとんでいました。
さて、後半開始。いきなりさっきの心配が現実になる。コンサドーレが攻めていたように見えた後半開始直後。後半6分に東ガスのカウンターが炸裂、ペナルティエリア内右側にドリブルで入ってくる東ガス選手を、渡辺がスライディングタックルでひっかけてしまう。主審の笛が高らかに鳴り響き、PKを取られてしまう。あっか~ん。見た感じ、ボールには行っていたものの、足にもかかっていたので、取るか取らないかは半々ぐらいの微妙なプレイ。当然、スタンドからは一斉にブーイング。その先は、主審へ向けられている。果ては、”渡辺~、気にするな~、お前のせいじゃない~”の声援が。渡辺や森は抗議するが、当然認められず。このPKをアマラオがきっちり決めて同点にされる。まずい。
同点になって、無理に攻めに出て来なくて良くなった東京ガス(負けていた時は、点を取りに行かなくてはならないので、攻めに出て来てました)。本来の堅い守備からのカウンター攻撃が、前半にもまして冴えはじめます。試合はボールの動きが激しくなり、ラフなプレーも結構見られるようになり、荒れつつありました。後半10分には、東京ガスベンチにいたコーチが、暴言か何かで退場を命じられる(何がおきたかよくわからない事件でした)。
さて、試合の方は、相変わらず、東京ガスペース。後半12分には、東ガス選手の放ったシュートが、ゴールポストにあたり、跳ね返ったところを別の選手に押し込まれ、失点、と思われたが、オフサイドの判定。今度は審判に助けられました。
これで、我慢できなくなったのか、フェルナンデス監督動きます。後半14分。選手交代。ピッチの外には、二人の選手が立っています。誰と誰だ?。一人は新村で、山橋と交代(これはこれまでもよくあった交代)。もう一人はなんと朝倉で、しかも浅沼と交代。攻撃的MFを下げて守備的MFの朝倉を投入。フォーメーションはどうかわるんだ?と、思ってみていると、なんとダブルボランチシステム(二人の守備的MF;ボランチを配置するシステム)。コンサドーレのダブルボランチは初めて見た(おそらく今季初だろう)。今年のコンサドーレのフォーメーションは、ほんとにフレキシブルだ。渡辺、古川の前、中盤の底の位置に、右に朝倉、左に太田の二人が並んでポジショニング。背番号が5番、6番が並んでいるのその姿は結構頼もしく見える。フェルナンデス監督、ポジションチェンジの激しい中盤からの飛込みについていけない守備陣のラインを安定させるために、点を取りに行かなくてはならないこの状況下で、あえてボランチを二人にして、まず、守備ラインの立て直し、という意図のようです。

守備陣の数が多くなったことで、試合のペースは五分五分へ。それでも時々、東ガスの切れのあるカウンターがコンサゴールを襲いますが、森の攻守もあり、なんとか退けます。ゲームが動いたのは、後半26分。コンサドーレの守備が安定してきて、攻撃に鋭さが戻ってきた所為かは知らないが、バルデスにマークについていたビルッカが、バルデスへのファウルチャージで、この日、二枚目のイエローをくらい、退場となってしまいます。
後半30分。一人選手が多くなったのを見て、監督、点を取りに来ます。DF古川を下げ、MF石塚投入。フォーメーションを4-4-2に変えて、攻撃的布陣へ。ゴール前には、ペレイラ、渡辺のDF二人に、朝倉、太田のボランチ(守備的MF)の二人が、四角いポジションで常にいるので、両サイドの村田、田渕のオーバーラップは思い切りがいい。しかも、投入した石塚が機能して、攻撃のリズムを変えて、東ガス守備陣が若干とまどっている。そうこうしているうちに、後半39分。東京ガスペナルティエリア内で、ボールを競る太田が、東京ガス選手に首に手をかけられ、引き倒されてしまい、PKを獲得(それほど、激しいプレイというわけではなく、太田は大事には至らなかった)。これを、バルデスがゴール中央に決めて2-1、ついに追加点を奪う。よっしゃ~。ボールは、キーパーの手にあたったので、少しひやりとしましたが、ゴールはゴール。前半にも、PK取ってくれていいようなシーンを、PK取ってくれなかったですしね。

試合の方は、このあと、東京ガスが反撃に転ずるも、なんとか切り抜け、試合終了。なんとか勝ったといった感じでしたが、東京ガスは天敵ですので、どんな形でも勝利は勝利、素直に喜びましょう。三年ぶりの勝利をあげ、J昇格に大きく近づきました。

(以上記事:二上英樹)


スペシャルポンチョ:この日は、”白い恋人”スペシャルデーとなっていて、入場者全員に、コンサポンチョがプレゼントされました。前面は赤黒二色で、CONSADOLE SAPPORO のロゴ。背中側は赤一色で、白い恋人のロゴ。ポンチョというには、少し大きさが足りないような気がしました。どちらかというと、練習の時、選手が着るビブスの様な感じです。でも、素材はゴムのようなもので、防水性は100%あります。この日は、雨は降りませんでしたが、これを着ると肌寒くなった札幌の夜に、少しは暖かでした。伝え聞くところによると、このポンチョ、一着320円。石屋製菓は、全部で2万着用意したそうだから、それにかかった費用は640万円(う~ん、太っ腹)。(モデル:OSC”コンサドーレ寄り”の、やまえしんいちさん(右側)、左側の人は匿名希望)
観客席:試合開始前30分頃の、ゴール裏芝席。ナイターの試合は、試合開始直前になるまで、なかなか一杯にならないんだけれども、それでも、これだけの数。ほとんどの人が、配られたポンチョを着たので、スタンドなどは、赤黒で覆い尽くされました。
太田キャプテン:この日、累積警告で出場停止の後藤キャプテンに代わり、キャプテンマークをつけた太田選手(背番号6番)。左腕には、黄色のキャプテンマークが。後半は、後藤キャップがいつもやっているように、ピンク色のキャプテンマークに変わっていました。右端はマラドーナ選手。
浅沼選手:この日、久しぶりの先発となった浅沼選手。フロント陣の考えで、中盤中央でプレーをしていました。マラドーナ選手へのマークを分散させるため、足のある浅沼選手を中央でプレーさせ、サイドからマラドーナ選手を突っ込ます作戦だったようです。そのせいか、今日の試合、結構、ハードタックルを受け倒される場面が多かったです。
東ガスのPK:後半開始すぐ、渡辺選手のファールで、東京ガスはPKを得る。蹴るのは、FWアマラオ選手。キーパーは森選手。この後、これを決められ、同点に追いつかれてしまいます。
新村選手と石塚選手:後半、リズムを代えるために投入した石塚選手(右端)と新村選手(左端)。この2人の投入が、試合のペースを札幌へ引き戻し、決勝点へと繋がりました。石塚選手の交代後すぐのスルーパスには、スタジアム中がどよめきました(残念ながら得点には結びつきませんでしたが)。
試合後の挨拶:三年ぶりの東京ガス戦の勝利。六連敗の借りはしっかり返して、ニコニコの選手達。
記事の共有:
大会タグ: