『二上英樹の観戦記』
等々力行ってきましたよ。一カ月遅れの夏休みを取り、はるばる札幌からやって参りました。昼過ぎに羽田に到着。札幌より暑い。しかも、3時ごろから雨が降ってきた。等々力には、六時ごろ到着するも、一向に止む気配なし、むしろ雨足は激しくなって来た。でも、厚別と違うところは、等々力には屋根があること。ゴール裏席からバックスタンドにかけて、二階席になっているため、一階席は二階席が屋根代わり、二階席にも屋根があります(屋根があるスタンドっていいなあ~、厚別にもほしいです、札幌市さん)。一方、おもしろいのはメインスタンドには、屋根がないこと(メインが一番しいたげられてます)。今日は、アウェイの試合とあって、スタジアムはフロンターレ一色。バックスタンドのアウェイ側一階席に陣取ったコンサ応援団の後ろの方の席で観戦となりました。
さて、今日の相手は、川崎フロンターレ。前回は、今期最高のゲームといわれた厚別での奇跡の大逆転勝利。延長Vゴールながら、勝ち点2をゲットしました。JFL前半戦取りこぼしの多かった川崎Fは、中休みに野口(平塚)や長谷部(V川崎)を補強し、後半戦は絶好調です。一、二位の直接対決だけに、お互いこの試合がいかに重大かを知っている。コンササポーターの数も数百人はいたような。一方、今期観客動員に苦戦する川崎Fは、富士通川崎工場社員を総動員しているとか。結局、観客数は5819人、平日のナイター、豪雨の状態で、この数はまずまずだと思います。
札幌の先発は以下の通り。前節の仙台戦、頬骨骨折で入院中のディドに代わり森が初先発。前節はほんの10分程度の出場で、仕事をする場面もなかったので、今日は動きが注目されます。フォーメーションの方は3-5-2で、従来どうり。戦術面での変更は無いようです。
- FW:山橋、バルデス
- MF:村田、マラドーナ、太田、後藤、田渕
- DF:冨樫、ペレイラ、渡辺
- GK:森
控えには、新村、鳥居塚、浅沼、古川、赤池の五人。今回は、7日の西濃戦まで、札幌に戻らずこちらにいるので、遠征メンバーには、上記の16人のほかに、吉原、石塚、黄川田らも来ていると聞いている。
一方、川崎Fは、ムタイル、野口のツートップ。ベッチーニョがゲームメイクを担当。その脇を長谷部や長橋がかためます。
試合の方は、7時に定刻どうり開始。雨足は若干弱くなったものの、ピッチの上は選手やボールが動くたびに、大きな水しぶき。試合の主導権を最初に握ったのは、川崎F。コーナーキックをたびたび獲得し、前半9分、何本めかのコーナーキックをシャイデにゴール正面から頭で見事に決められてしまいます。0-1、川崎F先制。アウェイの試合だけに、先制点を奪われたのは、痛い。選手もそう思ったのかどうかわからないが、動きがなんか悪い。川崎Fに、再三突破を許し、何かやばい雰囲気。そうこうしているうちに、前半12分。ゴール正面やや右側ペナルティエリアに入るかどうかあたりの位置からシュート。これが札幌DF(冨樫?)の足にあたり、コースが変わってしまう。GK森、逆を突かれた感じになって、ボールの勢いは緩いものの、ゴール右隅に入ってしまう。0-2。あっか~~ん、と思ったのは僕だけではあるまい。アウェイの試合で2点も先制されてしまった。ここは、厚別じゃないんだぞ、最後の力を与えてくれるスタジアムを覆うほどの応援はない。しかも、今日のGKは初先発の森、調子に乗る前に2点先制されたのは痛い。先制された2点は森の責任じゃないけれど(ほとんどDFの責任)、リズムに乗り損ねてしまったのは明らか。今日は、森の動物的反応プレーは見られないのか。
川崎Fペースだった試合の流れが、札幌側にやってきたのが、前半も20分あたりを過ぎてから、このころには、あれだけ激しかった雨もやんでいた。25分にはコーナーキックを3本続けてもらう。これは決められなかったが、28分、ゴール前に放りこんだボールをGK浦上がパンチング。左側へのこぼれ玉を山橋が相手DFにつぶされながらも村田へつなぎ、これを村田がノートラップでゴール正面にいた後藤へパス。後藤迷うことなく左足で振り抜き、横っ飛びするGKの手の先を抜け、ゴール右隅に突き刺さります。1-2、よし一点取り返したぞ。
その後は、一進一退のプレーが続くも、ゲームは動かず。一点返して、押せ押せのコンササポーターの歓声が悲鳴に変わったのが、前半36分。ゴール正面ペナルティエリアすぐ外あたりから、左側にいた長谷部へパスがつながる、ゴールエリア内まで持ち込む長谷部、田渕と一対一になるもこれをかわし、シュート。森も反応し手に当てるものの、ゴールに入ってしまう。1-3。田渕よっぽど悔しかったか、スライディングタックルしたまま仰向けになって、顔に手を当てている。試合の方は、このまま前半終了。
後半戦開始。コンササポーターの心のよりどころは、試合の展開があの厚別の大逆転劇と一緒。2点先制され1点返したところで、再び突き放され、1-3。ということは、このあと、大逆転劇が待っている?。
後半開始早々から、フェルナンデス監督が動く。DF冨樫に変えて、MF鳥居塚投入。4-4-2の攻撃的フォーメーションに変えて、点を取りに行くつもり。このまま、2点差で負けを選ぶより、逆転の可能性もあるものの大量失点の可能性もあるフォーメーションチェンジ。絶対逆転する、というベンチの決意がひしひしと伝わってくる。それでも、その決意が最初は空回りしたのか、後半4分鳥居塚イエロー、8分にはマラドーナがイエローを食らってしまう。更にフェルナンデス監督動く。山橋に変えて、新村投入。前回厚別での試合、吉原に変わって投入され、大逆転劇に大きく寄与した山橋のサイドからの切り込みも今日の、この天候とピッチに溜まっている水で思うようにドリブルできず、ここまであまり機能していませんでした。ポジションニングの非常にいい新村に期待がかかります。
更に、フェルナンデス監督が動きます。後半15分、渡辺に代わり古川投入。渡辺は前半途中で接触プレーの時、鼻血がでたらしく、鼻に栓を詰めてプレーをしていました。なかなか止まらないらしく、後半途中で時々ピッチの外に出て治療を受けていました。仙台戦のディドのプレーを見ていれば、こんなことで交代できるかと、渡辺が思ったかどうかは知らないが、もう無理と判断しての古川投入でした。渡辺に大きな拍手。そして、古川には、この大一番で、今期JFL公式戦初登場。その肩に大きな責任と期待がかかります。
後半15分にして、手持ちの三枚のカードをすべて使ってしまったフェルナンデス監督。果たしてフェルナンデスマジックは見られるのか?。それでも、試合の主導権はジリジリと札幌側に傾いてくる。投入した鳥居塚が効いて、中盤を支配できるようになる。シングルボランチの川崎Fは、マラドーナを一人のボランチがマークをするので手いっぱい。フリーにプレーできる鳥居塚が、縦横無尽にフィールド上を駆け回る。おかげで、村田、田渕のオーバーラップが常に、鳥居塚や後藤と組んで上がっていけるので、サイド攻撃が頻繁に見られるようになる。中盤の底にいる大田は、一人少なくなったDFラインの負担を少しでも軽くしようと、相手ゲームメイカーのベッチーニョにイエロー覚悟の激しいプレーで必死の守り。ピッチのセンターサークル付近で、たびたび、川崎にFKを与えてしまう。それでも、攻撃のリズムをつかんだ札幌は、川崎ゴールに殺到するも、GK浦上のファインセーブもあり、点に結びつかない(この日の浦上、悔しいくらい調子がよかった。ただし、この時までですが)。
ゲームが動いたのは、後半30分。札幌の猛攻に絶えきれないと判断したのか、ここまで来たから大丈夫と判断したのか、川崎Fの監督、FW野口に変えて、DF平山(中休みに名古屋から補強)を投入。守備を固めて、逃げ切りに入ります。思えば、これが、この試合の鍵だったかもしれません。ここから一気に札幌ペースに仕合の流れがやって来る。相手FW二人に、それぞれ、ペレイラ、古川がマンツーマンでついて動けなかったのが、野口がかけ、ムタイル一人になったことから、ペレイラがフリーに。本来のリベロの動きができるようになったペレイラは、ムタイルのマークを古川に預けると、前線へと頻繁にオーバーラップ。
そして、後半31分。右からのマラドーナのセンタリングにバルデスが頭で合わせて、2-3。ゴール内のボールを自ら、走ってセンターサークルのところまで、もって帰るバルデスの姿は、あきらめるもんかという気持ちがありあり。つづいて、36分。ペナルティエリア内左サイドにいたペレイラに浮き玉が通る。混戦気味になるも、ペレイラこれをオーバーヘッドキックで、ゴール正面へ折り返す。そこにいたのがバルデス。はずんでいる浮き玉を落ち着いてボレーシュート。見事に突き刺さったゴールで、3-3の同点。バルデスの一番うれしいときのパフォーマンス、コーナーフラッグのところまで駆け寄って、コーナーフラッグに抱きついていた。そこに駆け寄るコンサドーレの選手たち。コンサ応援団は大騒ぎ。スタジアムの一角しか占めていないコンサ応援団が一番うるさくて、熱い。みんな総立ちで応援を続ける。試合の方も厚別の時と同じ展開。応援団の頭の中には、きっと逆転勝ちに違いない、といった思いで一杯。きっと川崎側の頭にも、あの時の逆転負けが思い出されていることでしょう。
このまま一気に勝負をつけてくれ、の応援団の願いもむなしく、試合は一進一退。後半41分バックスの裏に出たボールに反応したのは新村、出てきたGKも左にかわすが、惜しくもボールは、そのままゴールラインを割ってしまった。ラインぎりぎりまで、スライディングでボールを取りにいった新村は、そのまましゃがみ込んで、すごい悔しそうな顔をしていた。選手の頭に延長戦のことなんて頭になかったようだ。90分で決める。そんな感じだった。
それでも、結局、決められず、延長戦へ。コンサドーレの選手はベンチの前で、マッサージと監督の指示を受けている。さあ、これからというときに、監督、コーチ、控えの選手全員で円陣を組み、力を入れていた。きっと、監督の檄が飛んでいたに違いない。
延長戦開始。札幌がやや優勢に試合を進めているように見えるも、一進一退の展開。1点決まれば、それで終わりのVゴール制に、試合を優勢に進めているなんてことは意味がない。選手たちの、一つ一つのプレーに歓声と悲鳴が交差する。延長に入って、川崎も、選手交代。疲れの出てきている長橋に変えて、菅野を投入。お互い、総力戦の感じを呈してきた。お互い勝ちに来ているゲーム、ボールが自陣ゴールから相手ゴールの間を行ったり来り。ペナルティエリアすぐ外での、FKをたびたび与えてしまう。それでも、コンサ選手の集中力は最高潮。森のファインセーブもあり、ゴールを、全員で死守。
試合は、延長前半で決まらず後半へ。コンサ応援団側のゴールに来た森が、応援団のエールに、視線はキックオフされるボールを見つつ、軽く右腕を上げて、恥ずかしそうに応じる。ディドの親指立ててのポーズほど決まっていなかったものの、札幌のゴールはおれに任せとけといった森の思いがが伝わってくる。コンサを応援している人たちの中には泣いてる娘もいた。そして最後の15分が始まった。
試合は相変わらずの展開だが、ここで、はたと気がついた。コンサドーレの選手たちの足が止まっている。バルデスの同点劇から押せ押せのムードだったので、気がつかなかったのだが、一人一人の動きが悪い。1-3の劣勢からの死力を尽くしての同点劇に選手たちはかなりの体力を消耗してしまっていたようだ。疲れからか、前線の二人は、守備に参加できないし、DF陣もカウンターの時の押し上げに切れがない。やばい、こんなときには、ホームのチームが有利なもんだ、と思って再び気がついた。スタジアム全体を覆い尽くすような、川崎Fを応援する雰囲気がない。厚別で、コンサドーレがピンチの時、覆い尽くすような、拍手やメガホンの音、応援の声が等々力にない。もちろん川崎フロンターレ応援団は、死力の限り応援を繰り返しているが、厚別で感じるような、アウェイチームに脅威になるような応援の雰囲気にスタンド全体がなっていない。助かった、と思った。これで、スタジアム全体が厚別のようになっていたら、その声援をバックに川崎Fの選手たちに攻撃されたら、疲れきったコンサドーレの選手にそれを押し返す力は残っていまい。ほんとに助かったと思った。ゴール裏の川崎F応援団とだけの応援合戦なら、コンサドーレの応援団だって負けてはいない。むしろ、劣勢を追いついただけに勢いとパッションがある。あらん限りの応援を続ける。
そして、延長後半12分。とうとう試合に決着がつくときがやって来た。川崎Fゴールに攻め込むコンサ攻撃陣。右サイドからのFKを得ます。マラドーナが蹴ったボールは逆サイドの後藤へ。後藤、これをシュートせず、中央にいたバルデスへパス。バルデスこれをシュート。みんなの願いを乗せたボールは、キーパーの手をかすめ、ゴール右サイドネットに突き刺さる。Vゴ~~~~~~ル。しかもバルデスはハットトリック。選手たちは、ベンチに向かって走り出し、ベンチのみんなは両手を突き上げてガッツポーズ。応援団はみんな総立ち。やったやった勝った勝った。みんな口々にそう叫んでいる。
試合終了の挨拶がすんで、コンサ応援団の前まで来た選手たちは、みんなにこにこ、ガッツポーズ(当たり前か ^^;)。そしてベンチに引き上げるとき、迎えに出てきたフェルナンデス監督は、選手一人一人を抱しめていた。よくやったと言っていたに違いない。
今日の試合、振り返ってみるとほんとにあの厚別での試合とそっくりな展開になった。2点先制され、1点返すも再び2点差にされ、絶体絶命の劣勢をバルデスの二発で追いつき、延長戦、同じくバルデスのゴールでVゴール勝ち。全くそっくりだった。なにか、あるんじゃないかと思ってしまうくらい。そっくりで、コンサには良い方の結果となった。あの時の借りを返すつもりで試合に臨んだ川崎F。Vゴール決められたあと、守備陣はゴール前で、しばらく仰向けになって倒れて動けなかったぐらいだから、そのくやしさは想像を絶するほどだろう。
とにかく今日の天王山に勝った。この勝利は大きい。ただの一勝ではない。直接対決を二連勝したわけだから、非常に大きい。残り10試合、すでに直截対決がない状態で、勝ち点6,二ゲーム差つけたのは大きい。二連敗しても、得失点差を稼げば一位のままである。また、3位の東ガスも仙台に負け、こちらとの差は勝ち点で10。このあと三敗してもまだ上位でいられる。J昇格の確率は、大きく上がった。当選確実まであと少しといったところか。
今日の勝因は、一つは監督采配の差。そして一つはサポーターの差。だったんじゃないかと思える。今回、最初に動いたのはフェルンデス監督。後半15分までの間に、手持ちのカードをすべて使ってしまった。有利な采配ができるはずの川崎Fの監督。あろうことか、FW野口を下げ、DF平山を投入。目先の2点差を守りに来た。これで助かったのがコンサDF陣。4-4-2で攻撃的になって、中盤を支配できるようになったと言っても、それは両刃の刃。カウンターを食らったときの守備陣の選手の数は足りないのである。案の定、野口が下がるまでのコンサDF陣は、ぎりぎりのプレーが続いていた。札幌がいつ追いついてもおかしくない展開と同様に、いつ決められてもおかしくなかったのである。ところが、野口を下げてくれた。コンサ守備陣の負担は軽くなり、ペレイラまでオーバーラップする始末。また、平山を投入するも、いまいち機能していないみたいで、鳥居塚は相変わらずフリーでボールを回し、中盤の支配率は変わらなかった。おかげで、あの大逆転劇につながったんであろうと思う。打つべき手は全て打って、後は全部任せたと選手を信頼したフェルナンデス監督と、見た目の劣勢に慌てて選手を信頼しきれず、守りに入ってしまった川崎F監督の差がでてしまったのか、とも思う。でも、この監督采配の妙も、あの厚別の試合の時とおんなじなんですよね。
そしてもうひとつは、サポーターの差。今回は、コンササポーターが良かったというわけではなく、川崎F側に、試合を決めてしまうような応援がなかったということ。延長に入って、コンサ選手の足には、死力を尽くしての同点劇にによる疲労の後がありあり。ムードだけはコンサ側にあったので、勢いでプレーしていると言っていいような展開であった。この時、川崎Fをスタジアム全体で応援するような雰囲気があったら、試合はどちらに転んでいたかわからない。むしろ、ホームアドバンテージをフルに使った川崎Fの勝利となっていただろう。そう思うと、厚別のスタジアム全体がウォ~~~~となる、あの応援は、まだまだとか、揃っていない、とかいろいろ言われるが、それでも他チームに誇っていい応援だと思う。こう考えてみると、厚別の応援はすごいとか、厚別にはなにかあるのかもしれない、とコンサドーレの選手たちが言うのはわかるような気がするし、そういうホームの応援の後押しがない川崎Fの選手たちは少しかわいそうだな、と思ってしまった。
一人一人の力は小さくても、厚別を満杯にするほどの声援は、すごい力があるんだなと改めて思った一日でした。そういうわけですから皆さん厚別に足を運んで、いつも満員にしましょう。次の厚別は、18日の東京ガス戦です。
今日は飛行機代もかかってしまいましたが、劇的な試合をこの目で見ることができて、安い買い物だったなと思ってしまう二上でした。
(以上記事:二上英樹)