『大熊洋一さんの観戦記』
甲府に着いたとき、嫌な予感はしたんです。東京を上まわるような暑さの中、コンサドーレは果たして動けるのか?暑さは甲府にとっても同じなれど、先週末の東京ガス×甲府戦に比べれば、今日のほうが風がある分だけだいぶ楽。しかも、猛暑の東京ガス戦でも甲府はよく動いていた・・・。
道に迷いながらも、なんとか試合20分前に競技場に到着。ゴール裏サポーターはコンサドーレのほうが多く、勇気づけられます。すでにメンバー発表は終わっていたようで、メインスタンド前に掲示されたメンバー表をみれば・・・おお、村田がいるではないですか!そのほか、リザーブは確認できませんでしたが、先発は以下の通り。
- GK:ディド
- DF:ペレイラ、富樫、渡辺
- MF:村田、太田、田渕、後藤、マラドーナ
- FW:山橋、バルデス
15時、照りつける真夏の日差しの下、試合開始。まずはコンサドーレが攻め込み、左からドリブルで切れ込んだ後藤がシュート。これは甲府GK・坂本がナイスセーブ。後から思えば、これが入らなかったことは大きかった。これが入っていれば、もしかしたらコンサドーレの圧勝だったかもしれないのに・・・。
7分、コンサゴール前で甲府のFK。壁を越えたボールはクロスバーに当たり、はねかえったところを甲府DF萩原がヘディングで押し込んでゴール、1-0。甲府はこの先制点の後も引くことなく、積極的に点を取りに来ます。11分、甲府MF大柴(克)が、攻めあがったコンサDFの裏に出て(これはオフサイドではなかったかと思う)、GKと1対1。ペナルティエリアの外まで飛び出したディドは大柴に手を出してしまい、イエローカード(これはレッドでもおかしくなかった)。
コンサドーレは後藤-村田の左サイドを中心に攻めるものの、中盤がなくなってしまうことが多く、前線までボールを運べません。一方、甲府は縦のロングパスで動きの鈍いコンサDF陣の裏をねらい、とくに渡辺はFWカリーニョに裏をとられることがしばしば。30分過ぎ、コンサドーレはマラドーナからのパスにバルデスがヘッドで合わせ、よし入った!と思いきや、ゴールの中に入った甲府DF石原がクリア。この辺から徐々にコンサドーレの攻める時間が長くなるものの、引き気味になってきた甲府の前にゴールを割ることができず、36分には焦れたウーゴが審判への異議でイエロー。攻めているのに点が取れず、なんとなくヤバイんじゃないか、という雰囲気のまま、ハーフタイム。
後半は、今度は右サイドの田渕を使った攻撃が増えます。しかし、甲府はゴール前を完全に固めてしまい、コンサドーレはきれいな形でシュートが打てません。ゴール前まではいい形を作っているのですが、いざシュートとなるとコースがなくて打てなかったり、強引に打って枠に行かなかったり。
9分、コンサドーレは富樫、山橋に代えて鳥居塚、新村を投入。ディフェンスを3バックから4バック(実際には両サイドバックが上がり気味で2バック気味)に変え、バルデスの1トップ気味だったFWは、新村が山橋よりも高い位置をとって2トップに。これが功を奏したか、ここからはコンサドーレの一方的な展開。しかし、攻めることは攻めるものの、シュートの精度があまりにも悪く、まったく枠をとらえません。
疲れからか、甲府の守備にファウルが目立つようになり、コンサにFKの機会が増えてきます。しかし、3回あったゴール前でのウーゴのFKは、すべて大きくはずれ。ウーゴのFK-ペレイラのヘッドもクロスバーの上。コンサドーレは28分、後半になってから運動量の落ちた村田に代えて黄川田を入れ、さらに分厚い攻撃をしかけますが、甲府の選手たちはほとんどがゴール前に集まり、コンサドーレはどうしてもきれいな形でのシュートが打てません。また、コンサも疲れたのか、あるいは焦りか、右サイドの田渕からゴール前のバルデスへハイクロスを放り込む形ばかりになってしまいます。しかし、ゴール前は甲府の選手がうじゃうじゃいるわけで、田渕はゴールラインぎりぎりまで攻めあがってサイドから崩すべきでした。これは左サイドも同様で、鳥居塚、新村らが中央に寄りすぎて、かえって甲府の選手をゴール前に集める形になってしまいました。
チャンスの後にピンチあり。残り5分のところで、後半の半ばからはほとんど攻める機会のなかった甲府がカウンター。気が付けば、コンサDFは2人、攻める甲府は4人。途中出場の甲府・深沢がミドルレンジから豪快なゴールを決め、2-0。
絶体絶命のコンサ。41分、コーナーキックでディドが上がってきます。そしてコーナーキックからバルデスが右足で叩き込んでゴール!だったのですが、バルデスのシュートの直前にコンサドーレの選手がハンドを取られており、得点は認められず。さらにふたたびのコーナーキック、またまたディドが上がり、しかもボールがクリアされてもディドは戻らず、フィールドプレーヤーとして走り続けます。しかし、ゴール前を固めた甲府のディフェンスを崩すことはできず、ロスタイムに入ってからのCK~鳥居塚のシュートもDFのクリアにあい、このまま試合終了。喜ぶ甲府のイレブン、そしてがっくりと肩を落とすコンサドーレのイレブン。
まずは、VF甲府の健闘を称えるべきでしょう。とりわけ、コンサ相手に正々堂々の勝負を挑み、見事に完封勝利を上げたDF陣には拍手です。前期、フロンターレに完勝したのもけっしてフロックではないことが証明されました。
しかし、それにしても、コンサドーレはストレスのたまる試合でした。ほとんどの時間帯で攻めていながら、また、相手の数倍のシュートを放ちながら、終わってみれば無得点。結局、最後までフリーでシュートを打たせてもらった場面はありませんでした。上で書いたこととも重複しますが、相手に疲れの色が濃くなった終盤は、ミドルシュートやサイドからの崩しで、いったん相手の守備の意識を外に向けることが必要でした。いくらバルデスのヘッドがあっても、ゴール前を固められた状態、しかもバルデスが孤立した状態では、得点にはなりません。相手をなめていたということはないのでしょうが、ちょっと楽をしすぎたのではないか、と思えました。
(以上記事:大熊洋一さん)
『横浜の渡辺さんの観戦記』
炎熱の盆地へ
JFL第18節。後期3戦めにコンサドーレが相対するのはヴァンフォーレ甲府。敵地甲府市小瀬(こせ)スポーツ公園陸上競技場が会場です。関東アウェイ担当の筆者は前期最終戦のJヴィレッジの福島戦の際はなぜか札幌で観光客をやっておりましたので、生コンサ観戦はバルデス爆発のデンソー戦以来ということになります。その翌週に厚別で甲府と対戦したときのスコアは3-0。バルデスが2試合連続のハットトリックを決めています。昨年までコンサに在籍した渡辺晋をして「コンサドーレは強い。川崎Fより手強い」といわしめた試合でした。
しかしながら今季の甲府はなかなかの曲者。第13節では韮崎で川崎Fを、15節では甲府市緑ヶ丘で東京ガスを撃破。「4強」にとっては相手ホームで戦う甲府はまことに厄介な難敵なのです。コンサも昨年、ここ小瀬で痛恨の一敗を喫し、J昇格へ赤信号を灯された因縁の地です。
その理由は盆地独特の炎熱の気候にもあるでしょう。四方を山に囲まれた甲府盆地は、日が照れば気温は一気に上昇し、湿度も高くむせ返るような環境になります。朝夕は逆に気温が下がり、つまり寒暖の差が著しいのです。ではナイトゲームでやればいいのではと思われそうですが、そうした気象条件=地の利を最大限に生かすためか、甲府のホームはすべてデーゲーム。小瀬競技場には照明設備がないとはいえ、その気になれば厚別のようにクレーン照明&電源車の調達も可能なはず。相手チームや観客といったものの他にこうした「見えざる敵」がいるという点で、今回の甲府戦は後期日程の中でも最もタフな「アウェイ中のアウェイ」といえるでしょう。
実際試合当日に甲府駅に降り立つと…暑い。覚悟はしていたが…。8月の終わりでもう秋の気配さえ漂う北海道から移動してきた選手にとってはこれは辛かろう。それでなくてもコンサには最近ちょっとネガティブな要素が多すぎます。水戸戦、福島戦で攻守のバランスを欠いた試合運びで、勝ったものの決して満足できないチーム・コンディション。期待の新戦力石塚もフィジカル面に不安を露呈し別調整となり、後半の課題といわれたDF陣の一角中吉は、とある理由により現在チームからは離れています。
唯一の明るい話題は前期に怪我をかかえ、だましだましプレーを続け、ついに手術に踏み切った左ウイングバック村田の復帰くらいでしょう。前述の「バランスを欠いた」点も、本来FWである黄川田を守備も要求される村田の代わりの位置に起用し、彼をケアすべく太田や後藤に負担がかかった結果とも考えられます。まだ100%のプレーができるかどうかは微妙なところですが、とにかく先発出場が濃厚。と、いうことで「村田マニア」でおなじみの安田優子さんもわざわざ甲府まで横断幕持参でやってきました。
平日のデーゲーム。「コンサライブ」の速報ページに「コンササポーターは無職が多いのか?」などと書かれましたが(笑)、予想以上にゴール裏には声援隊が集いました。北海道からも安田さんの他、「N☆LIGHTS」の小西さん、「Rhythm Red Beat Black」の小原さんなど。出張ついでの紳士や全くフリーで札幌からいらしたご婦人方も。そしてタイコは関西連合の西さんと横浜の嬉野(うれしの)さんの2つ。よし、なんとかカッコはついた。ゴール裏人数も甲府よりこっちの方が多い。負けないぞ!…暑いけれど…。
灼熱の悪夢
午後3時2分に試合開始。なお文中の計時は公式記録に準じます。したがって上記の大熊さんの観戦記とはズレがあります。
立ち上がりの数分はえてしてボールが足につかずバタバタするもの。それでも最初のチャンスは札幌に。甲府陣内に攻め入り、後藤の挨拶がわりのシュート。これはGK坂本の好守にあいものにできず。しかし「おお、最初から行ってるなぁ」という印象。それも束の間。カウンターからCKを与え、このあたりから雲行きが一気に怪しくなります。既にしてDFと中盤の連携にほころびが出始めていたのです。
公式記録で4分。コンサPエリア右サイド(甲府から見て)で不用意なファールを犯し、FKを与えます。阿井の右足から放たれたボールはいい感じでゴール正面へ。ここへFWカリーニョが飛び込みヘッド。ボールはクロスバーに当たってはねかえり、詰めていたDF萩原の真正面へ。最初のカリーニョのシュートを阻止せんと左に飛んでいたディドは倒れたまま、なす術なくボールがネットを揺らすのを見送るしかありませんでした。結果としてのバー返りのボールを押し込まれたのは仕方ないにしても、カリーニョにあれだけいい体勢で侵入されるのはDF陣の失態と言わざるを得ないでしょう。
ゴール裏からは早くも絶叫に近い「コーンサドーレ!」のコール。やりたくなかった先制点。内心「これで守りを固められたら辛いな…」と思いはじめます。
案の定「取られたら取り返せ」とばかり、札幌は前かがみになって攻めに転じ、甲府は引いて守ってカウンターという図式になります。札幌としてはこれをケアするためにはオフサイドトラップを巧みに用いるのが常套なのですが、わずか5分後、あっさりと破られます。札幌左サイドを甲府MF大柴がするりと抜けてGKディドと1対1。そして信じられないことに、Pエリアをわずかに出た地点でディドが「ラグビータックル」で大柴を倒してしまいました。
主審中村氏の笛が高らかに鳴り、歓声と悲鳴が交錯し、ピッチの上で時間は止まります。氏は胸のポケットに手をやり、赤のカードを左手に、そしてなぜか黄色も右手に持ってディドと正対。そして上がった方の腕は…なんと「黄色」でした。ゴール裏の我々は安堵。が、収まらないのは甲府の選手たち。主審を取り囲み「なんでぇ~!?」「見てたでしょぉーっ!」と猛抗議。呆然と立ち尽くすディドをなだめるコンサ・イレブン。恐らくはディドがあらん限りの「反省の色」をわずかな時間の間に主審に示したのでしょう。先のブラジル代表戦でも「ずるさが足りない」と言われた日本人選手はこのあたりを見習ってほしいものですが、それにしてもこの裁定はおかしい。誰がどう見ても明らかにディドの手はボールではなく、選手のユニフォームと腕に行っており「選手を阻止する」意図が見え見え。これはPエリアの中・外に関係無くレッドカード=一発退場に値します。実際、我々はそれを覚悟しましたし、他の人の情報によれは控えの森も「ベンチを立ってアップを始めていた」らしいです。上の大熊さんは「退場でもおかしくなかった」と控えめに書かれていますが、あの行為を「警告」で済ませるのは世界中で今日の主審だけではないでしょうか。
そしてにわかに試合は荒れてきます。1つファールのあるたびに両チーム選手が何事かピッチで言葉をぶつけあうようになります。特にバルデスとウーゴにはいつものこととはいえかなりしつこいマン・マークが施され、四六時中腕やユニフォームをマーカーに掴まれた状態でのプレーとなります。これに業を煮やしたウーゴが37分には主審に異議を口にしてイエローカードをもらいます。その後も主審に食い下がる姿を見たゴール裏は、もう1枚(つまり退場)もらう危険を察知して「やばい! やばい!」「止めろ! ウーゴを(主審から)離せ!」と絶叫。安田さんなどはもう半ベソ状態。
このあと前半は一進一退。いい形にまで持ち込む回数はコンサドーレの方が多いものの、GK坂本(彼は光っていた!)の牙城を崩せずバタバタしたまま終了。Pエリア周辺からも数回フリーキックの機会があり、またコーナーキックも多かったのですが、攻撃はバルデスめがけて放り込むだけのワンパターン。それ以外の選手の決定的なシーンといえば27分の村田。左サイドを快走し、ついにGKと1対1。しかし左足のシュートはGK坂本の懐にスッポリと収まってしまい絶好の同点機は霧散。まぁ…アレが決まったら決まったで、たぶん安田さんが失神したでしょうからゴール裏は別の意味で大変なことになったと思いますが(笑)。それにしても本来DFであり、かつ実戦から遠ざかっていた選手の悲しさ。あの局面で1つフェイントを入れてかわすことまでアタマが回らなかったのかなぁ…。それと、右足のキックにもう少し自信を持っていたなら、あの場面はゲットできていたと思います。
結局0-1のまま前半は終了。特にこの日、山橋の出来が悪く…と、言うよりも完全に試合の中から消えていましたから、後半開始と同時に新村を投入するものと期待されていました。
ところがメンバー交代はなく後半が始まり、それでも札幌ペースは加速。甲府の4人のラインDFは明らかに前半よりも引けた状態で水際でコンサドーレの攻勢をしのぎます。そしてカウンターでロングボールを蹴り込み、時折りコンサ側の肝を冷やします。
後半9分。ようやくフェルナンデス監督が動き、新村と鳥居塚を投入し、山橋と冨樫を下げます。村田をサイドバックにし、田渕も下げて4バックにし、鳥居塚は左めのハーフに。2節のジャトコ戦のようなはっきりとしたダイヤモンド型ではありませんでしたが、とにかく中盤に厚みを加える作戦に出ました。
これが奏効し、中盤でのリズムが出てきます。13節以来の登場となった新村が精力的に動き回り、それまでの山橋の回数を遥かにしのぐボールタッチでゴールへのシナリオを描きかかります。15分には新村のシュートをGKがはじいたところに鳥居塚が詰めましたが、右の角度のないところからのシュートはサイドネットへ。あと少しの精度が足りない。う~ん。気温32度・無風の条件下、ピッチの選手の足が重くなってきました。消耗戦になると涼しい土地からやってきたこっちには不利だ。
が、さすがに地の利があるとはいえ甲府も疲れてきました。ファールを犯さないとコンサドーレの進撃を止められない場面が増え、結果、Pエリア付近で直接FKをもらう機会もたびたび。蹴るのはウーゴ。一発入れば流れは変わるであろう魔法の右足は、しかし不発。ことごとくゴールの枠を外れてしまいます。
後半21分に大柴に代わり元コンサドーレの新明が登場したあたりまでは彼にエールを送ったりして余裕のかけらが見られたサポーター連中にも、次第に焦りの色が濃くなります。
コンサドーレは28分には村田に代えて黄川田を入れましたが、ここから先のシステムがよくわかりませんでした。彼はサイドバックとして入ったのではなく、同点狙いとして左ウイング的なポジション取りをしており、代わってやや鳥居塚が下がり目で太田とともにドイス・ボランチを組んでいたようでしたが。このあたりになると再三ペレイラも上がってきましたから、コンサドーレの最終ラインはスカスカの状態になっていました。
そこを41分に突かれ痛恨の失点を許します。直前に度重なるバルデスの決定機を体を張ったディフェンスでしのいだ後のカウンター。後半のコンサドーレのゴールは我々のエンドとは反対側でしたが、遠目でも「ああ、誰もカバーしていない」とわかるくらいの状況で、FW角谷が横に送ったボールをよく走ってきた途中出場のMF深澤がもらい、わずかにドリブルでPエリア付近まで持ち込んだあと、どフリーの右足で豪快にゴール右上に突き刺しました。
残り時間わずか。せめて1点でも…の願いも空しく、その後の再三のチャンスも決定的なボールは枠に行かず、「行った!」と思ったらGKのセーブにあい、攻めて攻めて攻めまくりながらゴールに嫌われて敗れるという、典型的な強豪チームの敗戦パターンでタイムアップのホイッスルは鳴ったのでした。
VFK vs. VSOP
「VFK」とはもちろんヴァンフォーレ甲府の略。そして「VSOP」とはお酒の名前じゃなくて「Very Special One Pattern」の略(ああ…オヤジネタだなぁ)。しかし近頃のコンサドーレの場合にあてはめると、最初の「V」は「Valdes」になります。そう、なんでもかんでもバルデス頼みなのです。 サイドへ振ってセンタリングを上げる。あるいはゴール前へくさびを打つ。スルーパスを送る。そのターゲットすべてがバルデス一辺倒。チーム総得点の半分近くを叩き出している選手ですからそれもわかります。ただし彼も人の子(そうは思えないときもあるが)。常時1人、コンサドーレが攻勢に転じたときは2人のマークが付くことは最近ではザラになり、そうなると思うようなプレーをさせてもらえなくなってきました。 ここで考えてみてください。11人対11人で、特定の選手に2人付くということは、どこかで必ず数的優位が作れなければおかしいですよね。ところが周囲のサポートがあまりに遅いため、そういった「穴」をこじ開けられないのが今のコンサドーレの攻撃の課題なのです。
長身と人並はずれたジャンプ力でポストプレーヤー的な役割も果たすバルデスですが、そのプレースタイルを見れば、むしろフィニッシャータイプでしょう。ポストプレーもそつなくこなしているように見えますが、ボールの落としどころに難があり、彼を経由したボールが他の選手によってフィニッシュまでつながる確率はかなり低いように思われます。もちろんそれはバルデス1人の責任ではなくて、前述の通り彼の周囲をサポートすべき選手の運動量の乏しさと創造性の欠如が指摘できます。簡単に言えば、とにかくバルちゃんは必死に飛んだり跳ねたり頑張っているのに、他が余りに頼りにならないということ。
あえて今日の試合で苦言を呈したいのは山橋です。石塚加入と新村の復帰で盤石だったはずのポジションにも黄信号が灯っているのに、持ち味である突破力を生かすこともなく、バルデスへのマーク集中で開いているスペースへスニークするでもなく、試合の中で完全に消えてしまっていました。FWとは名ばかりでほとんどの時間を中途半端な位置で費やし、ボールタッチの回数も下がり目の割りには少なかったようです。もっと早く新村と交代すべきでした。
彼と他の選手の仕事のほとんどはくどいようですがひたすらバルデスのアタマめがけて放り込むことのみ。せっかく田渕や村田がサイドをえぐって深い位置まで持ち込んでも、そこからすることはバルデスを探してセンタリングを上げることだけでしたから、守る方にとってはかなり楽。バルデスに密着して上がったボールに競り合えばいいのですから。しかも競ったDFは必ずしもボールを自分の頭で捉えなくてもいいのです。これが攻撃側の選手と守備の選手との大きな違いで、FWはきちんとしたタイミングでボールをミートして、思うような方向にボールを送らなければ仕事になりません。一方守備側はといえば「届かない」「競り負ける」と一瞬のうちに判断すれば、次善の策として相手FWに巧みに体を預けバランスを狂わせ、相手に完璧なプレーをさせないようにすればいいのです。2点を追う試合終了間際になって次々に訪れたコンサドーレのチャンスでも、甲府DFはバルデスにピタリと付き、十分な体勢でのシュートを許しませんでした。
とにかくバルデスを押しのけてでもシュートを打てる選手が欲しい。バルデスに送ると見せかけて自分で突破したりフィニッシュまで持って行けるような狡猾さを持った選手が欲しい。一方にマークが集中していると見るや、開いた場所へ走り込み、逆に今度は自分に注意を引き付けでバルデスに自由に仕事をさせてあげられるような、そんな総合的に高い能力を持ったFWが欲しい。そうすれば前述のように深い位置からのセンタリングもバルデスめがけたロビング・オンリーではなく、隙間をこじ開けて上がってくる選手に向けてのマイナス・パスとか、逆サイドへ振ってもう一度起点を作るとか、選択肢が増えるでしょう。「こういうこともできるんだぜ」と、相手に見せつけておけば、逆にバルデスも仕事がしやすくなるのです。
たとえフィジカル面で問題があるとはいえ、ベンチに置くべきは石塚ではなかったでしょうか。今のコンサに彼ほど「流れを変えられる」要素を持った選手はいないと思われますが。
更に言えばこの試合でコンサドーレが食ったオフサイドはたったの1回。いかに相手ラインの裏にボールを出す意識が低かったかがわかります。普通はもっともっと取られて当たり前なのです。これも「突破型」である山橋の不調と、パス配給元であるウーゴの疲労を如実に表しているとはいえないでしょうか。それからウーゴが再三あったFKを外したのは、キツいマークと審判の不可解な判定、自らのキレのなさなどが複合的にからみあって平常心を逸していたからかもしれません。
守備に目をやると1人最後尾で余るペレイラはともかくとして、他の選手は一体何をやっているのかよくわからない状態が前半の半ばまで続きました。特に左サイドの村田-冨樫のサイドは相手から見れば隙だらけ。ミスパスも多く中盤の左側でボールを失う場面が何度となく見られました。で、これをケアすべく太田や後藤が必死にカバーに回り、結果、マイボールになった直後には狭い地域に選手が固まり過ぎ、やっぱり一旦ウーゴに預けてためを作って、そしてバルデスにくさびを打って他の選手の戻りを待つ…という手順を踏まざるを得ないのでした。でも、そうこうしているうちにDFも体勢を整えてしまいますから、コンサドーレの思うような形は作らせてもらえません。
いずれにしても…このままじゃいけない。選手の入れ替えやシステムの再構築などのチームとしての「進化」が望まれるところです。果たして…。
書き漏らし棚ざらえ
試合終了間際のCKでは「せめて1点でも」の思いからか、あの厚別の川崎F戦のようにディドがゴール前まで上がってきました。しかも2度も。でも僕はこの姿にあの時のような感動を覚えることができませんでした。だって差は2点。ここで1点取ってももう残り時間はなく、2点を取っても延長戦が残っています。それよりは逆襲を食って3点目を失い、得失点差に影響が出る方が怖かったです。
痛恨の敗戦。さすがにガックリのゴール裏部隊。しかし立ち直りが早いのもボクたちのいいところ。試合開始前にゴール裏を訪れた石水HFC副会長から、話題の全員集合ポスターをプレゼントされ、試合後はそれを持ってバスに乗り込む選手たちにサインをせがんだりもしていました。
その選手たち。概して外国人選手は浮かぬ顔。ウーゴなどは視線を落としたまま無言でさっさとバスに乗り込み、ディドさんもペレイラも硬い表情でした。その一方でいつまで待ってもなかなかバルデスが現れません。理由は怪我の治療。詳細は不明ですが再三のDFとの競り合いで顔を切ったようです。プレーに影響が出なければいいのですが。
選手を待つ輪の中に穏やかそうな表情の初老の男性が。この方、実はキャプテン後藤のお父さん。たちまち湧き起こる「ゴトウ」コール。さっそく握手を求めたり記念写真を撮ったりもうたいへん。息子・後藤選手本人が現れると周囲から「カンドーのご対面です」なんて声も上がって「まるで『バラ珍』みたい」。
試合後明るかったのは(いつもネアカだが…)冨樫。バスの窓から僕たちに「みんな暗いから盛り上げてあげてよ」と。この個性、貴重だ。
正直言って不安だらけ。でもいよいよやって来ます川崎Fとの頂上決戦。魂一つにして、みんなで応援し、再び感動の勝利をものにしましょう!
(以上記事:横浜の渡辺さん)