コンサドーレ戦術解析7(データから前半戦を振り返る)(1997年版)

得点力

三回目は、データから見た、コンサドーレの前半戦を振り返って見ましょう。まずは、得点とアシスト。コンサ内での得点ランキングを見ると、バルデスの18点が光ります。2位の吉原が7点、JFL全体で見ても、2位は、ムタイル(川崎F)の10点ですから、その突出ぶりは、際だっています。3位はマラドーナ。今年は得点することよりも、アシスト役に撤するといいながらも、6得点は立派。ほとんどがFKを直接たたき込んでの得点。4位以下は混戦。

一方、アシストの方へ目を向けると、マラドーナの10が目立ちます。まさにシーズン前の宣言どうりの活躍です。こちらは2位以下が混戦模様。

<得点王ランキング>

順位 選手名 得点
バルデス 18
吉原 宏太
マラドーナ
渡辺 卓
後藤 義一、鳥居塚 伸人
ペレイラ、山橋 貴史

<アシスト王ランキング>

順位 選手名 アシスト
マラドーナ 10
後藤 義一、バルデス、田渕 龍二、
村田 達哉、山橋 貴史
渡辺 卓、吉成 大、ペレイラ
10 吉原 宏太、太田 貴光、黄川田 賢司

全体の得点数が少ないので、これだけで、評価を下すのはあまり意味のないことですが、それでも、以下の結果に各選手の性格がでていておもしろいです。まず、マラドーナ、宣言どうり自ら得点をあげるよりもアシストに撤するというのが結果にでています。次に、バルデス、ストライカーとしての得点能力の高さは言わずもながですが、もう一つの仕事、ポストプレーヤーとしての働きもしており、アシスト3をあげています。DFながら3得点の渡辺と1得点のペレイラ、同時に同じ程のアシスト(渡辺、ペレイラともに2)もあげています。これは、セットプレーのときの、この二人の仕事内容がはっきりと表れた結果になっています。前章で述べてありますが、セットプレーのとき、この二人はゴール前まで上がっていきます。その身長の高さを利用してシュートしたり、ポストプレーをしたりということが求められるわけですが、それがそのまま結果に表れています。同じDFながら、これとは違う仕事内容をしているのが、両ウイングバックの村田と田渕。彼らの仕事は、両サイドを駆け上がってセンタリングをあげ、シュートを打ってもらうことですが、アシスト3というのに、それが表れています。同様に、黄川田も、アシスト1を記録しています。

FW陣に目を向けると、バルデスの次に得点をあげているが吉原、7得点は、昨年の成績を抜いており立派です。吉原は得点は7得点あげているものの、アシストは1しかありません。吉原のプレースタイルというのは、DFラインの裏側へパスを出してもらって、するするっと抜け出るもので、自らがゲームメイクしたり、ポストプレーヤーになったりするタイプのプレーヤーではありません。そのため、アシストが少ないのだと思います。逆に、山橋は、アシストが3あるにも関わらず、得点が1しかありません。これは、山橋が、バルデスや吉原とまた違ったタイプのFWであることを示しています。バルデスや吉原がゴールへ向かうCFタイプのFWなら、山橋は両サイドのスペースに抜け出るウイングタイプのFWです。試合中でもよくサイドを自分で切り込んで行く山橋選手をよく見るでしょう。結果的に、センタリングをあげることが多くなり、アシストの方が多いのだと思われます。

中盤の選手は、得点を取るFWにパスを供給したり、ゲームメークをするのが仕事ですから、自然と得点より、アシストの方が多くなります。マラドーナの10を筆頭に、後藤が3、吉成が2、太田が1を記録しています。吉成の2は出場時間が少ないながら立派です。一方、おもしろいのスーパーサブの鳥居塚、得点は2あるもののアシストがありません。これは、自分もこの結果を見るまでは気がつかず、結構以外でしたが、これも鳥居塚のスタイルを表しているのかも知れません。僕は、鳥居塚はいつもマラドーナと交代ではいるので、同じように、パス主体のゲームメイカーと思っていたのですが、実は、そうではなくて、自らが二列目の位置から、前へ飛び出すタイプのプレイヤーなのかも知れません。


時間帯別得失点

次に、時間別の得点などを見てみましょう。コンサドーレの前半戦を終えての総得点は41、失点は8です。JFL16チーム中で得点は最多、失点は最小です。総得点の41は、昨年のシーズン終了してのチーム得点60に、シーズン中盤でせまる勢いです。今年、攻撃力をアップした成果が出ています。

それ以上に立派なのが失点の8。例年、シーズン通しての最小失点チームというのは、たいてい20点以上失点しています。30点以上失点して、昇格したチームもあります。コンサドーレがこのままの調子で行けば、シーズン終了時には、失点が10点台というのも夢ではありません。JFLが16チーム制になってから、失点が10点台のチームというのは、まだ1チームもありません。ちなみに、コンサドーレが後半戦も同様の得点を重ねて、全部で倍の82点取ったと仮定して、シーズン通して80点取ったチームは、過去にもいます(昨年の本田は85得点です)。コンサドーレの場合、バルデスとかが、派手にハットトリックとかを繰り返すので、その攻撃力に目が行きがちですが、実は、失点の少なさの方が、JFL史上1位になるかもしれないぐらい、際だっているんですね。このゴール前の強固さが、シーズン前のナビスコカップで、Jリーグのチーム相手に活躍できた原因だったのかも知れません。

<コンサドーレ得失点時間帯>

. 前半 後半 延長
前半
延長
後半
合計
得点 11 29 41
失点
シュート数 96 129 236
被シュート数 59 39 103

全得点41の内訳は、前半11、後半29、延長1です。圧倒的に後半の方が多いという結果がでています。”コンサドーレはスロースターター”だと、よく言われますが、こんな結果からいわれだしたものです。サッカーは全体的に、後半の方が得点が多いので、得点の偏りだけでは、実はなんとも言えないのですが、シュート数と関連付けて見るとおもしろいです。得点の偏りに比べ、シュート数はそれほど前後半で差がありません。決定率を計算すると、前半は10本のシュートで1ゴールなのに対し、後半はなんと4本のシュートで、1ゴール決めている勘定になります。また、失点の方はというと、前後半でそれほど差がありません。むしろ、コンサドーレの勢いを反映してか、後半の方が少なくなっています。これだけの結果を見せられちゃあ、やっぱり、コンサドーレは”スロースターター”だったんだ、と納得するしかありませんね。


観客動員数

今年のコンサ、前半戦の好調を反映して、観客動員数がのびています。1試合平均は、9575人。残念ながら1万人には届かないものの、昨年のほぼ倍の観客数を誇っています。JFLの他チームを見てみても、2位の仙台が4926人。最大のライバル川崎Fに至っては、3069人で4位なので、その動員数のすごさがわかると思います。今年は、メインスタンドのSS指定席や、バックスタンドのS指定席が、前売りの段階で売り切れてしまうなんてことが、おきるようになりました。後半戦、J昇格の試合が近づくにつれ、動員数は増えるでしょうから、年間平均1万人を越えるなんてことは夢ではないかも知れません。

<観客動員数(ホームゲームのみ)>

日時 天気 対戦相手 場所 有料入場者数
第3節 5/4(日)13:00 NTT関東 室蘭 8,422
第5節 5/15(木)19:00 ヴォルティス徳島 厚別 8,091
第7節 5/25(日)14:00 晴れ 川崎フロンターレ 厚別 10,531
第8節 6/1(日)15:30 くもり 西濃運輸 厚別 6,238
第10節 6/13(金)19:00 晴れ 本田技研浜松 厚別 13,245
(最高記録)
第12節 6/27(金)19:00 晴れ モンテディオ山形 厚別 10,229
第14節 7/12(土)13:00 晴れ ヴァンフォーレ甲府 厚別 10,272
合計 . . . . 67,028
1試合平均 . . . . 9,575
(昨シーズンは
5,533)

コンササポーターには、川崎F戦のあと斉藤監督に「今日は、サポーターに負けた」といわしめた力があります。地理的な条件から、かちかちのホームになる厚別では、関東や関西のチームに比べ、ホームゲームのホームゲームらしさが際だって表れます。スタジアム全体が、コンサドーレのサポーターばかりといった状態になるわけです(ただし、アウェイでは、逆になるわけですが)。そんなわけで、コンサにとっての厚別でのサポーターの力というのは、チームの集中している地域(関東や関西)に比べ、よりチームの力、あるいは選手を鼓舞する力に直結しやすいものとなります(スタジアム全体がコンササポータですから)。厚別不敗神話(現在15連勝中)が、生まれるのもこういう土壌があるからだと思います。だから、皆さん、厚別での試合はなるたけテレビなどで御覧になるのではなく、実際にスタジアムに足を運んで見てください。応援する一人一人の気持ちが、たとえ一つ一つが小さくても、それがスタジアム全体の大きさになったとき、どんなにすごいことがおきるのか、体感できることと思います(ボディソニック機能付のバーチャル3Dシュミレーションの比じゃないです)。


警告・退場

<警告・退場>

選手名 累積
警告
退場 警告
総数
参考
バルデス、後藤 義一、黄川田 賢司
吉原 宏太、朝倉 徳明、
ペレイラ、中吉 裕司
マラドーナ、田渕 龍二、
太田 貴光、山橋 貴史、村田 達哉
1試合出場停止処分済
渡辺 卓 1試合二枚で退場
1試合出場停止処分済
冨樫 剛一 2試合出場停止処分済

前半戦、これ以上ない成績で終えたコンサドーレですが、その戦い方に、気になる点があったことも事実です。それは、警告・退場の数が多いことです。一般に、強いチームは、無理なプレーなどで不必要な警告等をもらわないので、警告などは他チームに比べ、少ないのですが、コンサドーレはなぜか多いです。JFLでも年間通してイエローカードなどのチーム総数が、少ないチームにフェアプレイ賞を与えることになっていますが、コンサドーレは前半戦も中盤で、その数を早くも越えてしまい、フェアプレイ賞の対象外チームになってしまいました。1試合平均、二枚の警告をもらっている勘定になります。無警告試合もたしか1試合しかなかったように記憶しています。

サッカーのプレーをする上で、仕方無しにもらうイエローもあるでしょう。そういうものは仕方がありません。プロのトップレベルのプレーのぶつかり合いなんですから。でも、不必要な警告は、ひいてはチーム全体に迷惑をかけることになります。実際、累積警告で、田渕、マラドーナのでられなかった東京ガス戦は苦戦しましたし(その前節の西濃戦でのマラドーナのゴッドハンドによるイエローは、まったく不要な警告だった言わざるをえません)、大分戦での冨樫のレッド退場も無思慮なプレーでした。

長いシーズンですから、シーズン途中で、以上のようなこともあるでしょう。でも、できることなら、やめてほしいです。現在、累積警告を持つ選手も、後半戦20節から始まる上位陣の直接対決の時期に、出場停止などを受けるようなことがあれば、J昇格に大きな影響を与えるようなことになるかも知れません。

>>>>>> 戦術解析8へ続く >>>>>>

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