『二上英樹の観戦記』
JFL前半戦も残り二試合。前節、予想外の2位以下のチームの敗戦で、ちょっと余裕のできた札幌。このまますんなり勝って、前半戦を終わりたいところ。
本州各地では大雨のため、サッカーの試合どころではない方も多いでしょうが、ここ札幌は雲一つない、快晴。本田戦以来のデーゲームで、気温も上がって熱い、熱い。しかも、試合日の三日前の段階で、メインスタンドのSS指定席とバックスタンドのS自由席は、売りきれてしまうという大事件。メインの方が売り切れたことはあるが、バックまで当日券がでないのは、コンサドーレの試合が始まって初めて。今日は、15000人を突破か、と意気込んででかけたものの、実際の入場者数は、以外と伸びず、10272人。売りきれたはずのバックスタンドに空席があるのはなんで?。といいたくなるような、拍子抜けでした。それでも、1万人を超えたのは偉い。この入場者数を、いまいちと言っているのは、余裕かうぬぼれか、バブルで終わらないことを祈るのみ。
さて、今日の相手は前節川崎Fに3-0で快勝している甲府。前節川崎をこてんぱんにやっつけただけに、侮れない相手。しかも、甲府には、今オフ、札幌から移籍した渡辺(晋)、新明らがいる。こういう相手は、相手選手のモチベーションが高いため、苦戦するもの(大分戦がそんな感じでした)、何かが起きる予感。それでも、まさか厚別じゃあ負けまい、と思いつつ試合を見る。
それでは、先発メンバーの紹介。
- FW:山橋、バルデス
- MF:黄川田、吉成、太田、後藤、田渕
- DF:中吉、ペレイラ、渡辺
- GK:ディド
累積警告カード三枚で、出場停止の村田に代わって、黄川田が左のウィングバック。また、2日程前の練習で足を痛めたマラドーナに変わって吉成が攻撃的MFの位置に入り、ゲームメイクします。この2人、厚別では初先発。しかも、吉成は厚別初見参。また黄川田は2節前の山形戦(厚別)で、交代ででているもののわずか10分。この2人が、どういったプレーをするのか。といった点が、今日の見どころ。控えは、いつもの通り。森、冨樫、浅沼、鳥居塚、吉原の五人。
一方、甲府の先発メンバーには、札幌から移籍した渡辺晋がいる。背番号は3であるものの(入団時はバックスとして期待されていたということ)、ポジションは攻撃的MF。今やゲームメイクもこなし、甲府の柱になっています。また、新明が控えに入っています。
さて、試合の方はというと、前半に風上に立った札幌が、キックオフから押し込みます。川崎に快勝した甲府の攻撃はどうだろうと様子見することもなく。甲府ゴール前に攻め込みます。甲府の攻撃も、そんなにすごいということもなく、危ない場面もなし。それでも、点が入りそうで入らない展開が続き、端々と時間が過ぎていくだけ。バルデス君が、ちょっと外しすぎといったところか。
ここで、今日の見どころの2人の選手の動きを見てみましょう。まず、吉成。結構よかったです。バルデス、山橋の両トップの底に位置し、ゲームメイクを担当しました。右に左に動き運動量も豊富でした。また、彼は左利きで、コーナーキックをよく蹴っていました(今日はほとんど吉成と後藤の2人がCKを蹴っていました)。彼のこの左足は武器になるでしょう。マラドーナや鳥居塚と、またちょっと違った間を持つ選手です。普段はあまり動かずボールを持った瞬間からパスを出すまでの動きがすばらしいマラドーナ。そのスピードに乗ったドリブルと豊富な運動量でゲームメイクをする鳥居塚。どちらとも違うんですね。吉成を見たのは、この試合が始めてなんで、うまく説明できないが、とにかく違う。ただ、今日は無難にこなしていましたが、これがJレベルで通用するかは不明です。
そして黄川田。その攻撃力に期待してみてたんですが、前半は最悪。やはりまだ守備面での動きとポジショニングが悪いようで、動きがぎくしゃくしていました。そのせいか、攻撃面でも生彩を欠き、悪い方へ悪い方へと気持ちがいってしまっていたようです。だんだん、声も小さくなっていっていたし、積極性も無くなっていっていたようでした。DFのフォーメーションとしては、センターバックには中吉と渡辺、右に田淵、そしてリベロのペレイラが、そのフリーな状態を生かして黄川田のフォローをするといった感じでしたが、とにかく黄川田の動きは良くなかったです。結構ポジショニングが他の選手とかぶっていたし、ボールもあまりもらえていませんでした。前半終了間際は、ピッチの外から、フェルナンデス監督の雷が落ちていましたから、かなり悪かったのでしょう。後半に入ってからも守備面での動きは相変わらず悪かったですが、バルデスの三点目をアシストしてからは、動きが良くなりました。
観客が、点はまだかあ、と思い始めた37分。コンサに大ピンチ。右から切り込んだ甲府FWの大柴が、中吉をかわし、渡辺卓もかわし、ディドと一対一。あかん、と思った瞬間、大柴のけったボールはゴールポストのほんの少し左側を外れていきました。これで目が覚めたのか、コンサドーレの選手の動きも良くなります(気のせいだったかも。でも、少なくとも、退屈してきていた観客の目は覚めました)。その二分後、右サイドのコーナーキックを得ます。蹴るのは吉成。その左足で蹴られたボールはゴール正面へ。これに走りこんで来たバルデスの頭にどんぴしゃり。目にも留まらぬ速さのボールが、すごいスピードで、ゴールネットにつきささります。ゴールキーパーとゴール内にいた2人の相手DFの計三人は、一歩も動けないほどの速さでした。これで、1-0。大切な先取点を得ました。前半は、これで終了。
さて後半、動きの悪い黄川田はどうなるか、と思われたが、選手交代はなし。一方、甲府は、15分に新明を投入。甲府は選手を替えてくるも、試合展開は変わらず。甲府の攻撃陣に脅威は感じられず。前半と同じような試合展開。ちょっと、このチームに川崎が3-0で破れたのが信じられない展開。DFは、選手の戻りが異常に速いも(カウンターを食らってもMF、DFの戻りが異常に速い。あっと言う間にゴール前には甲府の選手で一杯)、攻撃陣にそれほど脅威は感じられず、逆に、どうしちゃったのかな、と思ってしまうほど。
後半12分。ゴール正面ペナルティエリアの外あたりでボールを持った吉成。鮮やかなフェイントとスピードで、2人のDFの間を抜けます(いやあ、ほんとに鮮やかなフェイントでした)。右サイドゴールライン際まで持ち込んだ吉成、外側にいる田渕にパス。田渕これをダイレクトに蹴り、センタリング。ゴール前逆サイドにいたバルデス、相手DFと競り合いながらもヘッドを放ち、GKが手に触れるも、そのまま、ゴール左側に吸い込まれます。
さらに、続く後半19分。左サイドでボールを持った黄川田、相手DFと勝負。相手DFを抜きさった黄川田、ゴールラインギリギリまで持ち込んでセンタリング。ボールはゴロで転がりながらも、何故かゴール前を横切っていき逆サイドから走り込んでいたバルデス、ごっちゃんゴールを足でポンと決めます。これで、バルデス今日三点目、二試合続けてのハットトリック。絶好調です。
この初アシストで、気をよくしたのか、ここからの黄川田は動きが良くなります。再三左サイドを駆け上がり、自信を持って相手DFと勝負をし強引にボールを持ち込みます。この時、黄川田のポジションは、バックスタンド側でしたが、黄川田がボールを持つと、バックスタンドから拍手と歓声が。前半と守備の動きは全然ダメだったけれど、そのまっすぐにゴールを目指す剛(ごう)のスタイルは、他のコンサドーレの選手には無いキャラクターだし、見ている方にはわかりやすいので、早速ファンの心をつかんだようです。でも守備はまったくダメだったので、まだまだ村田は越せないようです。それでも、自分のスタイルを持っている選手なので、今後の成長が楽しみな選手です。
試合は、後半36分、吉成に代わり鳥居塚、山橋に変わり吉原がピッチに立ちます。バルデスのハットトリックも見られたし、あとは吉原のゴールだ、と期待されましたが、試合はそのまま終了。3-0で、勝ち点3を得ました。
今日は、バルデスショーでした。二試合連続のハットトリック、得点荒稼ぎ状態。得点を17点までのばし、ランキング2位のムタイルに7点差をつけて得点王独走。ここんとこ、続いている中位チームは結構攻めても来るので、それが、コンサドーレの攻撃陣の好調に繋がっているようです(ほとんどバルデスですが)。シーズン初めの下位チームとの試合では、がちがちに守りにはいられて、苦戦しましたから。一方、やはり気になるのは、日本人FWの元気のなさ。先発の山橋も、交代した吉原もゴールを奪えていません。バルデスの好調はうれしいですが、一人に頼りきった状態は非常に危険です。他の選手もガツガツいって、貪欲にゴールをねらって欲しいところです。
今日は、3-0で快勝も、得点パターンがバルデスへのセンタリングからだけのもので、多少つまらなかったです。もう少し、多彩な攻撃をしかけて欲しいところでした(前半はサイドからの攻撃があまり見られなかったし)。ここら辺は、ゲームメイクを担当した吉成や鳥居塚にとっては一つの課題でしょう(マラドーナがゲームメイクすると変わるんでしょうが)。
さて、JFL前半戦も残り一試合(福島戦)。アウェイでの試合ですが、サクッと勝って気持ちよく夏休みを迎えましょう。
(以上記事:二上英樹)