『二上英樹の観戦記』
札幌のまちにコンサドーレが帰ってきた。思えば、昨シーズン最終戦富士通川崎戦以来、半年ぶりの札幌厚別である。シーズンオフには大幅な補強を図り、今年のコンサドーレは強いと言われながらも、見ることのできなかったコンサドーレが、ナビスコカップから数えて11試合目にして、ようやく札幌に帰ってきた。札幌のサポーターにとっちゃ、今日が開幕戦、そういや4年前のJリーグが発足した時の開幕戦(横浜-川崎in国立)も5/15だったなと思う。
札幌開幕戦の今日、札幌の天気予報は雨。観客動員に響くなあ、と内心思う。それでも夕方までは曇り空でなんとか持ちこたえていた。が、ついに5時半くらいから降り出した。そして、本降りに。あと、五時間くらい持ちこたえてくれ、の願いもむなしく厚別に着いた頃も、雨はやまず。試合開始30分ぐらい前に着いたのだが、メインもバックスタンドも結構空席が目立つ。やっぱり雨がなあ、と今日の先発メンバーの紹介放送を聞きながら思う。
試合開始前15分、試合前のショータイム、うわさのコンサドールズが初登場。厚別ではこれからもでてくるみたいなんで、コンサドールズが何か知りたい人、また見たい人は、スタジアムへ。ちなみにメインスタンドからじゃないとよく見えません。また、試合開始30分前ぐらいに来ないと見損ねます。一緒にでてきた、ドーレ君のぬいぐるみが透明のカッパを来ていたのは愛敬でしたね。
そうこうしている内に試合開始時間がやってきました。いよいよ札幌開幕。今日の厚別は、アウェイゴール側から、ホームゴールへ向かって、かなり強烈な風が吹き、芝は雨でかなりスリッピー。選手はかなりやりにくそうでした。スタンドの方は、雨と風でかなり寒い。それでも気がつくと、観客が結構増えてきた。先発メンバーは以下の通り。
FW:吉原、バルデス
MF:村田、マラドーナ、太田、後藤、田渕
DF:中吉、ペレイラ、渡辺
GK:ディド
いつもの3-5-2フォーメーション。前節大分戦でレッドをもらった冨樫が出場停止で、そこに中吉が入っている。控えは、山橋、鳥居塚、浅沼、古川、森。試合は、徳島ボールで始まった。試合開始早々、徳島に押し込まれる。風下になった札幌は、DF陣が、縦のロングボールの処理にてこずっている。ハイボールを目測ミスで後ろにそらしたりトラップミスをしたり、強い風と雨と、ぬれた芝によるボールの足の速さにあたふたしている。こりゃ、今日は、1点くらいはなんかの拍子にとられそうな予感が。試合開始5分くらいの徳島の攻撃を耐えた札幌は反撃に転じる。札幌の攻撃陣に目を移すと、吉原が今年はいい。DFとのチャージングでは吹っとばされるのは相変わらずだが、ボールをもらったら前を向くのが早い。昨年よりは確実に早くなっている。だから、前へ前へとボールが動く。こりゃ相手DFはやりにくかろうなと思う。そうこうしているうちに、前半15分ぐらい、右サイドを切れ込んだマラドーナからセンタリングが上がる、ファーサイドにいたバルデスがゴール前中央にヘティングでおりかえす。そこにいたのが吉原、シュート一発、ゴール正面から蹴りこんで札幌が先制。吉原、これが、厚別での初ゴール。ここから、ゴールラッシュだと思ったが、簡単にはいかない。選手達は、風とぬれた芝にかなりてこずっているようで、ボールがうまく繋がらない。で、30分ごろ、コンサゴール前でごちゃごちゃしているボールをクリアしたものの、ペナルティエリア外正面から徳島の高尾にミドルシュートを打たれる。低い弾道のボールは、選手達の間を抜け、ゴール右隅へつきささってしまう。ふがいないバックスにディドが怒る怒る。この失点は、コンサドーレが今季、ちゃんと攻撃されて取られたはじめての失点(前節はPKでした)。その後も、試合は一進一退。やや札幌が押しているかなという程度で、前半終了。
フ~、と一息ついて、スタンドを見てみると、メインスタンドはいっぱい、バックスタンドも見回すといっぱい、ホームゴール裏もいっぱい。結局、雨がじゃんじゃん降っているにも関わらず、入った観客はなんと8091人。昨年の札幌開幕戦鳥栖戦は7000人くらいだったから、それ以上はいったことになる。晴れてたら10000人を超えてたのかも。ハーフタイム中に、他球場の得点経過が放送された。川崎2-0仙台と言うのを聞いて、やっぱり川崎強いなあ、それに比べて札幌は何てこずってんだ、と思ったのは決して僕だけではない。しかも、本田も東京ガスもリードしている、と聞かされたなら、なおさら。
後半開始。札幌ボールからキックOFF。風上の札幌は最初から全開、キックオフからそのまま中央をパスをつないで、切り裂いて、マラドーナからの絶妙のスルーパスが前方の吉原へ。吉原これを決めて、今日二点目。後半10秒、ハーフタイムのアイダ、売店やトイレに行っていたためこのゴールを見損ねた人達が観客席入口のゲートのところで、しまったと言う顔をしている。ライブで見るときは、一秒たりともピッチから目を離しちゃいけないんだ。テレビと違ってリプレイなんていうものはないんだから。吉原が二点取っちゃだまっておられないのがバルデス。後半15分ごろ、ハーフラインあたりからのマラドーナからスルーパスに反応したバルデスが抜け出す。追いついてきたDF2人をゴール前で切り返しでかわして、最後は、GKもかわすかといった感じでシュート。バルデスは、コンサに来て厚別で初得点(バルデスには昨年は鳥栖戦で決められているんです)。これで3-1、ほぼ試合が決りました。こうなると、観客は吉原のハットトリックを期待します。そうこうしている内に、左サイドの後藤へマラドーナからパス、これを後藤がシュートするも右ポストにあたっってはねかえる。そこにいたのが吉原。落ち着いて決めてハットトリック達成。吉原今日は絶好調。厚別での初ゴールのみならず、プロになってはじめてのハットトリック。このあと、バルデスが負けるものかとマラドーナからのスルーパスを決めて、5-1。
今日のFW陣は絶好調なるも、それ以上にすごいのがマラドーナ。試合終了後のお立ち台には、吉原とバルデスが立つも、僕はこの日のMVPはマラドーナだと思う。結構DFに蹴られたり倒されたりすること多く、決して自分自身がドリブルで突破したりゴールを決めたりのハデさはなかった。一見すると、マラドーナってこんなもん、て感じがしないでもない。でも裏返してみれば、きついマークを受けているわけで、パスにしても、DFを自分に引きつけ、そして競り合いながら出している。だから、ラストパスをだしたあとはDFに倒されて、ピッチに倒れていることが少なくない。今日の5点すべての起点はマラドーナ。マラドーナのキラーパスから、得点に繋がっている。2、3、5点目はマラドーナからのスルーパス、1、4点目も、マラドーナからのパスをバルデスや後藤が蹴っている。バルデスはゴール前におりかえしたがシュートを打っていてもおかしくないタイミング。後藤はシュートが右ポストにあたる不運(これが吉原の前に跳ね返り吉原にとっては幸運だったが)。FW陣の活躍にマラドーナも点が欲しくなったのか、前線で張ることが多くなりましたが、点は入れられす。終了前10分ぐらいで、マラドーナは鳥居塚に交代。今日の交代はこれだけ。試合前は、札幌出身の山橋が交代ででてくるんじゃないかと言われてましたが、今日のFW2人の好調さ(吉原3発、バルデス2発)からいくと、ちょっと変えられない雰囲気。で、今日はこのまま試合終了。終わってみれば5-1で快勝。東京ガスを抑えて首位に立ちました。
今日は、新チームになってから、初めて生でゲームを見ましたが、チーム戦術が去年と変わりましたね(当然と言えば当然だけれども)。中央から強引にこじ開けるような攻撃が増えたような気がします。これは強いチームの戦い方ですね。他にも、いっぱい気がついた点や新しくなったところ、変わったところが目に付いたんですが、それはまたの機会に(そのうち、小話の部屋で、戦術解析の続編とでもして)。雨で足はべちゃべちゃ、手は寒さでかじかみ、お尻がちょっとぬれましたが、心は札幌の勝利にホッカホカで、家路につく私でした。
(以上記事:二上英樹)